未完の大器「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス」13年目の“序章” 満身創痍での新作発表の理由
「志鎌英明の服作り」をありのままに伝えたかったのは、運営体制が変わったことも影響していた。23年に前親会社から独立して株式会社ディスコーダンスを設立し、自己責任でゼロから取り組んだ初めてのコレクションだった。「モノ作りに制限がなく、これまでやりたかったことを実現しやすくなった。責任は大きいけれど、自分らしさを120%で表現しやすいから、今はめっちゃ楽しい」。現在の卸先は国内6割、海外4割で約80アカウントと取り引きしているという。卸先アカウント数で見ると好調そうだが、「もう、全然。売り上げは言えないけれど、難しい服のオーダーがたくさん入るから利益は多くない。でも、チームや周りの人たちの暮らしはある程度豊かにしたい。自分自身が高級車に乗って、高級時計を身に着けたいという願望は一切なくて、服を作りたいという気持ちが勝ってしまうから」と正直だ。
同ブランドの強みは、ほかが真似したくでもできない生産背景と、志鎌デザイナーのカルチャーへのタッチポイントの広さである。一方で、そろそろ世界的にブレークしそうな期待をされ続けて、今年で設立13年を迎えた。運営体制が変わり、クリエイションも変わった。海外挑戦への熱い情熱と、少しのビジネスの野望を携え、“未完の大器”は開花に向けて前進する。ただ、前のめりで未完だからこそ「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス」は輝くのかもしれない。いずれにせよ、進化への序章はまだ始まったばかりである。