「ある日突然、会社に行けなくなる…」女性が直面する深刻なメンタル不調の背景に潜む「年収の壁問題」
■女性のほうが燃え尽き症候群になりやすい 燃え尽き症候群とは、仕事や家庭生活などにおいて、過剰なストレスが長期にわたって続いた結果、肉体的・精神的な疲労が限界に達した状態のことを指しています。具体的な症状として、それまでモチベーションを高く保っていた人が突然やる気を失ってしまい、朝起きられなくなったり、会社へ行けなくなったりするというものがあります。 燃え尽き症候群に関する調査を見ると、男女間の差が指摘されています。 例えば、マッキンゼーの2021年のレポート「Women in the Workplace」によれば、調査対象となった働く女性の42%が燃え尽き症候群であることがわかりました。同調査の男性の値は35%であったため、女性のほうが燃え尽き症候群になりやすいといえるでしょう。また、リンクトインによる約5000人を対象とした調査でも、仕事に関して何らかのストレスを感じている割合が女性では74%でしたが、男性では61%となっていました。 このように女性のほうが仕事でのストレスを抱え、燃え尽き症候群になりやすいのはなぜなのでしょうか。この点に関して、経済学の視点から分析した研究が最近発表されました。 ■見えてきた燃え尽き症候群の原因 分析を行ったのはウィスコンシン大学オシュコシュ校のベンジャミン・アーツ教授らです(*1)。彼らは、女性のほうが燃え尽き症候群になりやすいのは、女性に偏る家事・育児負担と、その背景にある性別による役割分担意識が原因ではないかと考えました。 アメリカでは直近の数十年間で働く女性が増えましたが、家事・育児負担は依然として女性のほうが多くなっています。2018年の調査を見ると、6歳未満の子どもを持つアメリカ人女性の1日の平均家事・育児時間は5時間48分でしたが、男性は3時間7分でした。女性のほうが約1.9倍男性よりも多く家事・育児をおこなっているわけです。このような家事・育児負担を抱えたままで働くことは、肉体的・精神的にも疲れてしまう原因となり、最終的には燃え尽き症候群となってしまう恐れがあります。 アーツ教授らは、伝統的な家庭観を持つ女性ほど、この影響が大きくなるのではないかと考えました。つまり、「男性=仕事、女性=家事・育児」という価値観を強く持つ女性ほど、家事・育児を重視するあまり、仕事の負担感が重くなり、燃え尽き症候群になりやすいというわけです。