11月歌舞伎座特別公演『ようこそ歌舞伎座へ』の案内人・虎之介が歌舞伎の魅力を語る!
■歌舞伎座でいちばん好きな場所は、すっぽんの真下です(笑)
小僧 歌舞伎をあまり観ない人からは、「言葉が難しくてわかりにくい」という声をよく聞きます。初心者はどんなふうに歌舞伎を楽しんだらいいと思いますか。 虎之介 確かに最初から物語を理解するのは大変だと思うんですよ。長い物語の一部分を抜粋して上演していたりするので初心者には理解しにくいですよね。だから最初は単純に「あの役者、かっこいいな」とか、華やかな衣裳を目で楽しむとか、音楽を耳で楽しむとか。そういう感覚的なところから歌舞伎に触れていただくというのがいちばん大事かなと思っています。 イヤホンガイドっていう便利なものがあるんですけれど、僕の説明を聞いていただいたらわかるはずなので、今回はつけないで観ていただきたいですね。つけていたら没収したいと思います(笑)。 部長 そういう意味で、舞踊の『石橋』は、歌舞伎をよくご存じない方にもイヤホンガイドなしで楽しんでいただけそうですね。獅子の精が長い毛を振る勇壮な“毛振り ”が見どころのひとつで、今回は、尾上松緑さんを筆頭に、同世代の中村萬太郎さん、中村種之助さん、中村福之助さん、そして虎之介さんと、同世代4人の皆さんで獅子の精を勤められます。 虎之介 そうですね。2015年にも歌舞伎座で、(松本)幸四郎さん、(中村)壱太郎さんと『石橋』をやっていて、そのときはまだまだヘタくそだったんですけれど、あれから何度か獅子をやらせていただいているので、今度はもっとちゃんとしたものがお見せできるといいなと思います。 小僧 毛振りのうまいヘタって、どこで見分けるものなんですか。 虎之介 体と毛が一緒に動いてしまうと汚く見えるので、体はブレずにドシッと構えて、毛だけをきれいに回すことが大事ですね。それとだんだん疲れてくると毛先が寝ちゃって、ペニョンっとしおれた花のようになってしまうんです。 でも、うまい人は、毛が「立つ」と言ったりしますけれど、ずっと毛が大きな弧を描き続けるんですね。今回は、僕もそういう勇壮な毛振りを披露できるように頑張ります。 小僧 ところで虎之介さんが歌舞伎座でいちばん好きな場所ってどこですか。 虎之介 じつはあまりなくて(笑)。というのも、歌舞伎座って歌舞伎にとっての聖地なので、ぴゅって気が引き締まる空気があるんです。舞台袖は大道具さんなんかがぴりぴりしているし、楽屋も先輩と一緒だったりしたら全然くつろげないし(笑)。 唯一、気が休まるのがすっぽんの真下かな。花道の七三(しちさん)と呼ばれる場所にすっぽんと呼ばれる小さいセリの一種があるんですけれど、その下ですね。 部長 幽霊とか妖術使いとか、あやしげなキャラクターが出てくるところですね。すっぽんの下といったら、かなり暗いんじゃないですか。 虎之介 けっこう暗いです。そこに一人でいるときが唯一、一息つけるときですね。 小僧 だいぶこじらせている感じですけれど大丈夫ですか(笑)。仲間とわちゃわちゃやっているほうが好きかと思ったんですけれど、違うんですね。 虎之介 僕、意外とそういうタイプなんですよ(笑)。友達とわいわいやるのも嫌いじゃないけれど、一人時間のほうがじつは好きなんです。