11月歌舞伎座特別公演『ようこそ歌舞伎座へ』の案内人・虎之介が歌舞伎の魅力を語る!
■立役と女方、その両方を“二刀流”でやっていきたい
部長 それにしてもこの1年は虎之介さんにとって飛躍の1年だったんじゃないでしょうか。大きなお役にもチャレンジしました。 虎之介 そうですね。去年の12月歌舞伎座では『天守物語』で姫川図書之助を勤めさせていただいたり、有難いことに、ずっと忙しくさせていただいています。中でも5月に(中村)勘九郎さん、七之助さんとご一緒した『歌舞伎町大歌舞伎』はとても勉強になりました。 小僧 昨年できた東急歌舞伎町タワーの劇場、THEATER MILANO-Zaで上演した舞台ですね。勘九郎さん、七之助さんとともに、虎之介さんも大活躍でした! 世話物の新作『福叶神恋噺』では、主役の大工辰五郎のダメンズぶりが最高で笑わせていただきました! 虎之介 あの舞台では、色々な気づきがありました。世話物のコメディって、自分では得意なジャンルだと思っていたんですけれど、得意なものほど難しいということを痛感させられましたね。 ここで一間置いたら、面白いはずだよねっていうところで、意外と反応が薄かったり。それで人からアドバイスをもらってやると、笑いがとれたりするので、自分の感性とお客さまの感性って意外と違うということがわかって、とても勉強になりました。 部長 虎之介さんは立役も女方も両方されていて、そのときどきで、全然違う声になるので、すごいなと思って拝見しています。この先、どっちをやっていきたいというのはあるんですか。 虎之介 もともとうちの家は立役と女方、どちらもやるのが当たり前なので、僕も両方やっていくつもりです。ただ、両方やるといっても普通は白塗りのきれいな立役と女方なんですね。ところが僕の場合、隈取をするような勇ましい立役のお役をいただくことがあって、それと娘役だったりすると、ふり幅が大きくて、けっこう大変なんです。 部長 確かに赤っ面の朝比奈(『寿曽我対面』)や力士の放駒(『双蝶々曲輪日記 角力場』など、女方とはかけ離れたお役もされていますね。 虎之介 そうなんですよ。放駒をやるために体重を増やしたりすると、同じ月に娘役ができますかっていうと、けっこうきつい。でも、そのふり幅の大きいところを両方できる役者に僕はなりたいんです。 とはいえ、低く野太い声を出したあとに娘の声を出したりすると、喉を傷めてメンテナンスが必要になったりして。どこまで続けられるかわからないですけれど、どちらもできるのが圧倒的にかっこいいなと思うので、できる限り“二刀流 ”でやってみたいと思っています。 部長 今後のご活躍が楽しみです! ますます忙しくなりそうですね。 虎之介 じつは今年はずっと忙しくて走り抜けてきたので、少し落ち着いて自分を見つめ直したいと思って、10月は1カ月、お休みをいただいたんです。でも、1カ月休んでみたら、休みは3日でいいなって思いました(笑)。 今は一番色々なことを吸収できる時期だと思うし、壁につきあたればあたるほど成長できる時期なので休んでいる場合じゃないなと思いましたね。 小僧 お休み中は、どちらかに行かれたんですか。 虎之介 フロリダに行ってディズニーランドで遊んできました。うちの父がディズニーが大好きなんです。それで毎朝6時半に起きて、夜も12時まで、乗り物に乗ったり、テーマパークを歩いたりして。 これまでも東京ディズニーランドには家族で何度か泊まりで行っていて、もうこれは我が家の恒例行事というか、義務なんですよね(笑)。今回も父は、カチューシャで頭にしっかりとミッキーの耳をつけてました。 部長 可愛い!(笑) お父さま、きっとお似合いでしょうね‼ 虎之介 歌舞伎好きのかたはそう思ってくれるかもしれないですが、一歩間違えたら、あぶないおじさんですから(笑)。僕も東京ではさすがにやらないですけれど、フロリダではカチューシャをつけてエンジョイしました。 小僧 親子でミッキー、最高ですね! こうなったらディズニー歌舞伎をやるしかないんじゃないですか。 虎之介 いいですね、ディズニーさんのお許しがいただけるならやりたいです。 小僧 だんだん虎之介さんがミッキーに見えてきました(笑)。ディズニー歌舞伎、いつか実現させてくださいね。 部長 11月の歌舞伎座も楽しみしています‼ 虎之介 はい、頑張ります!! 中村虎之介●なかむら とらのすけ 1998年、東京都生まれ。屋号は成駒家。 父は三代目中村扇雀、祖父は四代目坂田藤十郎。2001年に初お目見得、2006年1月に歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」の『伽羅先代萩』にて、初代中村虎之介を名乗り初舞台。コクーン歌舞伎には、2021年上演の『夏祭浪花鑑』で初参加。