<ラグビー>スコットランドに惜敗。五郎丸抜きの日本の収穫と課題とは?
収容人数が45000人というスタンドの上段には空席が目立ったものの、公式で「24113人」のファンが集っていた。ラグビー界にとっては、2004年の集計開始以来の日本代表戦では最多の記録だ。体格差に劣る赤と白のジャージィがスクラムで伍せば、歓声が沸いた。 2016年6月18日、愛知・豊田スタジアム。ジャパンが昨秋のワールドカップイングランド大会で唯一勝てなかったスコットランド代表を迎え、同国とのテストマッチ(国際間の真剣勝負)における最少失点差で戦い終えた(1989年に東京・秩父宮ラグビー場で勝った際は相手がテストマッチと認定せず)。スコアは13―26に終わった。 もちろん、ワールドカップで過去優勝2回の南アフリカ代表などに勝ったイングランド組が多く揃うジャパン陣営は、結果を出せなかったことを悔しがった。フッカーの堀江翔太主将は「結果は残念でした。ポジティブな部分も、ネガティブな部分もたくさんあった」と漏らした。 4年に1度あるワールドカップ。その自国大会を2019年に控え、本格始動の季節を過ごしていた。ところがジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)が正式に着任するのは秋からで、欧州6強の一角を相手に新指揮官不在で臨むこととなった。 さらにはイングランド大会の主将と副将だったリーチ マイケルや五郎丸歩は怪我で辞退した。薫田真広・男子15人制日本代表ディレクター・オブ・ラグビーが中心に編成した今回のスコッドからは、他にも参加を見合わせるメンバーが続出する。薫田としては「イングランド組が2019年まで戦えるかを観てみたい」というジョセフのリクエストを出来る限り汲んだ格好だが、マネージメントに関する苦言は現場から多く漏れた(4年後に向けたメンバーリングが本当の意味で見えてくるのは、ジョセフの来日後となりそうだ)。 もっとも、スタンドオフの田村優は言う。 「協会にちゃんとして欲しいと、思うのは思うんですよ。でも、それが自分たちのパフォーマンス低下の理由にはならない。僕らはラグビーでしか評価されない」 国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズのメンバー、スタッフを中心に、言い訳無用で準備を進めてきた。 不揃いな組閣状況のため曖昧になりがちだった試合の位置づけについても、イングランド組のスタンドオフの小野晃征が「この3試合をどう2019年に繋げるか」という視点を提案した。 すでにおこなわれたカナダ代表戦を含めた3試合で現状を把握。それを秋以降の本格的な強化計画策定に繋げようというのだ。 「もちろん、勝ちに行きます。ただ、今回の3試合を土台として考えるのもありかな、と思います。やはり、日本代表はトップ3のチームじゃない。(現在世界ランク3位の)南アフリカ代表に勝ったからといって、それ以下のチームにいつでも勝てると思ったら、すぐに抜かれる。常に進化して、新しく作っていかないと」 試合のフォーカスポイントは、「休ませない」に定めた。スコットランド代表には、フォワードの先発要員の平均身長で5.4センチ、平均体重で3.5キロも上回られていたなか、「セットプレー(スクラムはラインアウトなど、フォワードが支える攻防の起点)を減らす。相手を疲れさせる」と田村は目論んだ。