【箱根駅伝】「力不足を認めるところから始めよう」"三冠"めざした國學院大、5年前とは意味合いが大きく変化した総合3位
前田康弘監督「対策すべきは〝山〟だと改めて認識」
1年時から3年連続で箱根路を走り、今季の出雲と全日本の優勝に貢献した青木瑠郁(3年、健大高崎)も、前田監督と同様のことを口にする。 「復路組が執念を見せてくれたことで、チームとしての地力を見せられたと思います。優勝できなくて悔しいですが、そこは胸を張りたいです」 一方で4区区間2位と健闘した自身の話に及ぶと、途端に険しい表情に。「目標はあくまで区間賞だったので、いい走りとは言えないです」。総合優勝を目指していたからこそ、区間賞を獲得した青山学院大の太田蒼生(4年、大牟田)に45秒差をつけられたことが許せなかったのだろう。 青木によると「三冠」への重圧は、チームにもなかったという。「出雲、全日本で優勝したのは自信になりましたが、見据えていたのは箱根での優勝だったので。『三冠』よりも箱根で勝つことに全員のベクトルが向いてました」 悔しさの中で初優勝に向けた課題も明確になった。前田監督は「対策すべきは〝山〟だと改めて認識しました。今回は5区と6区で(青山学院大に)6分半ほど差をつけられましたから。距離にすると2km以上。毎年のように5区と6区が鬼門になっている。監督の私自身がもう少し深く山と向き合わないと、この展開は打破できない」と話す。 ただし「山のスペシャリスト」を養成する考えはないようだ。平地とトラック、そしてハーフマラソンのタイムを作らないと、実業団で陸上競技を続けることが難しくなるからだ。 「スペシャリストを作るつもりはありませんが、坂のトレーニングなどで適性を見ながら、5区と6区で力を発揮できる選手を見いだしていきます。あと5区と6区は経験を生かせる区間でもあるので、1回目で結果が出なくても、我慢して起用し続けるのも大事かと」
新主将・上原琉翔「平林さんの背中をずっと見てきた」
箱根の悔しさを晴らす舞台は、箱根しかない。チームの絶対的エースで、出雲と全日本の優勝を牽引(けんいん)した平林は抜ける。彼が担った主将の座を引き継ぐのが、上原琉翔(3年、北山)だ。高校入学後、野球から陸上に転じた上原は、1年時から箱根を走っている。出雲は5区区間賞を獲得し、全日本はアンカーで初優勝のフィニッシュテープを切った。 「この1年、平林さんの背中をずっと見てきました。平林さんは主将として風通しが良く、オンとオフのメリハリがあるチームを作ってくれました。そこは引き継ごうと思ってます」 上原は内野手で活躍していた野球選手時代、小、中で主将を務めた経験がある。チームの先頭に立つことへの不安はないようだが、國學院大史上最強とうたわれた平林のチームでも、箱根駅伝総合優勝を果たせなかった現実を重く受け止めている。 「もともと仲間には厳しく言えないタイプなんですが、主将になった以上、自分の殻を破らなければならない。もちろん、自分にも厳しくしていきます」 前回、國學院大が3位になった時、上原は高校1年。「陸上に転向した1年目、まだ県外の大会に出場できる選手ではありませんでした」。5年間で大きく成長し、立ち位置も変わった。 9区を担った箱根では、前田監督から期待されていた「攻め駒」としての走りができなかった。「前半は良かったんですが。18km過ぎでバランスが崩れてしまって……力不足です。後輩の蔵之介に厳しい場面で襷(たすき)を渡したこともふがいなかったです」 前田監督は平地にも課題があると見ている。「後半です。15kmくらいまでなら青学大ともタイムはほぼ同じなんですが、あと5kmが粘り切れない」。青木は自戒を込めて話す。「優勝するには、平地での爆発力も必要。主力が投入される区間では、他校のエースに負けない走りが求められる」