「膀胱がん余命1年宣告」から開き直りがん共存記 尿が腎臓に逆流、まずは腎機能の回復を最優先
②薬物療法(免疫チェックポイント阻害薬) さらに①で効果がある場合の維持療法として、また①で効果がない、再発した場合の次の療法として、免疫チェックポイント阻害薬を使用する。ひと言で言うと、免疫が、がん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)薬だ。 からだを異物から守る機構の司令塔とも言われる細胞集団のT細胞(白血球のうちリンパ球と呼ばれる細胞の一種)のアンテナやがん細胞のアンテナに作用して、免疫にブレーキがかかることを防ぐ。T細胞のアンテナにブレーキがかからないから、T細胞はがん細胞を攻撃することができる。ひところ話題となったオプジーボもこの阻害薬のひとつだ。
③薬物療法(抗体薬物複合体) さらにパドセブ(エンホルツマブ べドチン)という薬を点滴で投与する治療法がある。①②で効果がなかったケースでは、かつては標準的な治療法がなかったが、2021年9月にパドセブが保険適用となった。 パドセブの働きはこうだ。パドセブの抗体部分が、尿路上皮がん細胞の表面にあるネクチン-4と呼ばれるたんぱく質と結合。パドセブが、がん細胞の内部に入り込み、薬物が切り離される。切り離された薬物が、がん細胞の増殖を妨げ、がん細胞を死滅させるーー。
国際共同第Ⅲ相試験(EV-301試験)では、従来の化学療法群と比較して全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)で優位な延長効果が認められた。 ■従来の化学療法に比べても優位 それぞれの中央値は以下の通りだ。 OS:パドセブ(12.9カ月)/従来の化学療法(9.0カ月) PFS:パドセブ(5.6カ月)/従来の化学療法(3.7カ月) 全奏効率(治療後に腫瘍が縮小または消失した割合)は、パドセブ群40.6%に対し、従来の化学療法は17.9%。
いずれもパドセブ群の優位性が明らかな結果である。 さらに、今年9月24日、アメリカ・ファイザーとパドセブの開発を進めているアステラス製薬は「パドセブと抗PD-1抗体キイトルーダの併用療法について、根治切除不能な尿路上皮がんに対する一次治療として、適応追加に関する承認を取得しました」と発表した。 このリリースの中で、パドセブとキイトルーダの併用療法群の有効性と安全性を、白金製剤を含む化学療法群と比較した第Ⅲ相EV-302試験のデータが紹介されている。