「膀胱がん余命1年宣告」から開き直りがん共存記 尿が腎臓に逆流、まずは腎機能の回復を最優先
「進行性膀胱がん」「肺とリンパ節に転移」「ステージ4」「余命1年ちょっと」といった言葉が頭から離れない。喫茶店に立ち寄って、コーヒーを飲みながら考えをめぐらす。 医師の言葉を反芻しながら、事実は事実として受け止める。いたずらにあらがっても仕方がない。65年近く生きてこられただけでも十分じゃないか。やり残した仕事もないし、家族も元気だし。こうなったらがんと共存し、マイペースで生きていこう。いつしかそんな思いになっていた。
■余命を聞いた家族の反応は? 帰宅後、容態を案じる家族(妻と娘)に、口頭で「進行性膀胱がん」との診断内容だったことを伝え、詳しくはメモを作成して渡すことにした。パソコンで今日1日の流れ、医師の診断内容、余命宣告をもれなく記載して2人に手渡した。2人は紙を受け取り、黙って読み込んだ。 しばらくして妻が「私が毎日拝んでいるから大丈夫よ」と励ましの声をかけてくれ、娘は「症状がわかって対処法が明確になれば、それはそれでいいんじゃない」と現実を受け止めている様子だ。
入院時には2人も同行して医師から詳細を直接聞くという。それでいい。久しぶりに家族との一体感を味わうことができた。さあ、がんとの共存生活がいよいよ始まるぞ。 膀胱がんとは 膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称で、9割以上は膀胱内部を覆う尿路上皮にできる尿路上皮がん。その他には扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどもある。 膀胱がんの患者数は全国で2万3185人(2020年)。男性1万7424人、女性5761人で男性患者が約3倍だ。死亡数は9598人(男性6388人、女性3210人)。
生存率(ネットサバイバル=がんのみが死因となる状況を仮定して計算=2014-2015年、5年生存率)膀胱がん全体62.6%、Ⅳ期(ステージ4)18.3%(国立がん研究センターのサイト参照) ■治療の選択肢は? 膀胱がんⅣ期の一般的な治療法(肺に転移しているケースなど) ①薬物療法(抗がん剤治療) 2種類の抗がん剤を点滴で投与して行う治療法はゲムシタビン・シスプラチン(GC)療法が一般的だ。この2種類の抗がん剤を使用することで約50%にがんの縮小が見られ、約10%は消失との報告もある。ただし効果の持続期間は平均で10カ月程度で、平均生存期間は14カ月と報告されている(四国がんセンターのサイト参照)。