「静岡リニア再始動」に立ち込める暗雲。南アルプストンネルの"見本"も崩落!
これに対し、県および生物部会は、JR東海に対して以下の対応を求めてきた。 ①まず「回避」②難しければ「低減」③どうしても影響が及ぶなら最後の手段として「代償措置」 だがJR東海が当初主張したのは「代償措置(移植)」だった。つまり、環境の激変が予想される沢に生息する動植物を別の場所に移すというものだ。 これに対し、県のリニア対策の窓口である「中央新幹線対策本部」で本部長を務める森貴志副知事が、生物部会で毎回「回避か低減が先」とくぎを刺していた。このことからも、「代償措置は最後の手段」という共通認識があったはずである。 しかし、ここでNPの概念が唐突に出てくる。4月12日の会議ではその言葉の紹介程度だったが、8月5日の生物部会で、竹門氏はその詳細を説明した。 「これまでは現在ある自然環境を守ることが目的だったが、それでは不足として、現状よりも良い環境をつくるNPが国の施策として認められた」 この説明に岸本年郎部会長代理がこう続けた。 「影響を低減するだけではなく、JR東海に南アルプスの自然を守るんだとの姿勢を示してほしいとの内容になる」 これは具体的に何をするということなのか。会議後の囲み取材で、私は岸本部会長代理に尋ねた。 ――「お花畑」が喪失したら、別の場所に「お花畑」をつくる、は想像できます。しかし、沢が枯れてしまったら、同じ沢はつくれない。となると、その沢以上の価値のある自然、例えば「お花畑」をどこかに創出する、というイメージでとらえていいでしょうか? 「いろいろな創出はあるが、そのイメージでいい」 ――では、いったい誰がその新しい「お花畑」が失われた沢と比べて"同等以上"と判断するのでしょうか? 「難しい。今後、協議の中で決めていきます」 これがNPだとすれば、言い出しっぺの県や生物部会にも相当に厳しいかじ取りが求められることになるだろう。