編集者、管理栄養士、保健師…ダウン症の子を育てる親たちが目指す「壁のない社会」
ダウン症の子を育てる親たちが同じ境遇の後輩家族の支えになろうと活動している。編集者は悩みに寄り添う出版物を手がけ、管理栄養士は実体験に基づくアドバイスで支援。保健師は家族のニーズが分かる看護師育成に向けて一時、大学教員として働いた。ダウン症だけでなく、さまざまな病気、障害を抱える人たちのために「壁のない社会」を目指した地道な取り組みが続く。 ■当事者側から発信 書籍化に挑む 今年3月、ダウン症の次女を育てる大阪府のガードナー瑞穂さんの絵本「もし ぼくのかみが あおいろ だったら」と、実体験を生かしてダウン症の子育ての悩みに寄り添うエッセー本が東京ニュース通信社から発行された。企画、編集したのは同社の中山広美さん=横浜市=で、自身もダウン症の長女(9)を育てる。 昨年9月にガードナーさんの手作りの絵本を紹介する読売テレビの番組が放送され、それを目にしたことが発行のきっかけとなった。絵本は子供が親に髪が青色だったとしても好きでいてくれたかなど質問する中で障害についても問いかける内容で、中山さんは「障害児の親としてインパクトのあるストーリーだと感じ、広く伝えたいと思った」と振り返る。 中山さんは長女出産の際、ダウン症だと分かった当初は「夫婦で途方に暮れ、泣き暮らすみたいな感じだった」。だが長女がみせるかわいい表情、しぐさと接する中で愛情が深まった。絶望感は2週間ほどでなくなり、3歳年上の長男のときと同じ喜びに包まれたという。 子育てのために必死に情報をかき集めたが、頭を悩ませたのは仕事との両立だった。周囲から「働くなんて考えてはダメ」などと言われ、保育園探しでもダウン症を理由に立て続けに断られた。運良く保育園が見つかり復職できたが、「ちょくちょく社会の壁、心理的な壁に直面した」。ママ友の「一緒に遊ぶと勉強になる」という言葉に「学びの教材みたい」と感じたこともある。 障害児の親の集まりで知り合った人たちが当事者団体を立ち上げるなど積極的に活動し、自身もずっと出版物を出したいと考えていた。ガードナーさんとの打ち合わせは共感しあいながら進み、絵本だけでなくエッセー本も提案。「数ある出版社の中でも状況が分かってくれるあなたで良かった」と感謝されたという。 「社会にはまだまだダウン症に関する情報が足りず、当事者側からも発信しないといけない」。今後も編集者の立場として書籍化に挑戦していく。