編集者、管理栄養士、保健師…ダウン症の子を育てる親たちが目指す「壁のない社会」
■苦悩を経験して支援する側に
食事に困難さを伴う子供のサポートに力を入れる管理栄養士、大竹友里恵さん=横浜市=は自身が苦悩した経験から、支援する側に回った。
平成26年に出産した長男(10)にダウン症があり、先天性食道閉鎖症という合併症を持っていた。一般的な離乳食へのステップは参考にならず、戸惑いの連続だった。長男は食卓で食器を投げるなど動き回り、大竹さんは管理栄養士の立場ながらも「悪戦苦闘し、涙を流しながら、ぐちゃぐちゃになった」。
神奈川県立こども医療センターの偏食外来で相談し、悪循環から抜け出せた。医師の指導のもと食卓風景を撮影すると「自分が怖い顔をしていることに気付いた」。焦らず一つ一つ課題に向き合った。食器が投げられないようにする方法を医師と一緒に考え、きれいに拭いた食卓の上にペースト状の食べ物を載せた。食事の仕方が改善されるたび医師に褒められ、救われた。
病院、施設の外で実体験に基づくアドバイスができる管理栄養士がいれば助けになると考え、5年前から交流サイト(SNS)などを通じ相談を受け付けている。現在は健康食品などを手がける福岡市の会社「mog」の社員も務め、活動の幅を広げる。
4月には同じ境遇で子育てに奮闘する管理栄養士から「いつか私も誰かの役に立ちたい」とメッセージが寄せられた。自身の役回りに手応えを感じたといい、「これからも、無理をせずに前を向く存在でありたい」と笑顔をみせる。
パイオニアの声 地域作りに
神奈川県の保健師、清水裕子さんは平成20年、ダウン症の長男(16)を出産した。長男は耳が聞こえないため、幼少のころはとくに付き添う時間が長かった。当時、保健師として働いていた横浜市の職場でも「迷惑をかけてごめんなさい」と謝ることが多くなり、障害児の育児と仕事の両立に疲弊し退職した。
「どんな子供でも育てる自負はあったが、職業人としての人生への影響を受けたと考えてしまった」