反捕鯨団体シーシェパードの過激テロ!調査船に侵入した活動家が「日本最高」と喜んだワケ
問題となったのは、第2次だ。 日本はクロミンククジラの捕獲枠を、倍以上の最大935頭にまで一気に増やしたのだ。それだけではない。初年度に10頭のナガスクジラを捕獲する計画を立てた。 南極海のナガスクジラは、乱獲期に絶滅の危機に瀕したが、調査によって資源が回復して8万5000頭の生息が明らかになった。 それでもナガスクジラ捕獲計画のニュースは、国際世論や反捕鯨団体を動揺させた。 追い打ちをかけるように、2007年度から毎年50頭のナガスクジラに加え、50頭のザトウクジラも捕獲すると日本政府は発表した。阿部は現場の戸惑いを口にした。 「ミンクの捕獲を一気に増やした上、ナガス50頭とザトウ50頭という計画も立てた。結果的に捕れなかったわけですが……。我々から見ると、捕ったとしても肉を船に積み込めるのか、という量だった。そのへんが疑問だったし、センセーショナルなことをして、国際世論を煽らなくてもいいじゃないかと。あれからなんですよ、シーシェパードが妨害をはじめたのは」 ● 「大量に獲れば鯨肉価格が下がる」 水産庁担当者の思惑は外れた 関係者によれば、捕獲枠の拡大は、当時の水産庁担当者の判断だったという。 捕獲頭数を増やし、鯨肉の単価を下げて、広く市場に届ける目的があった。それでは、疑似商業捕鯨の批判は免れない。しかも担当者の思惑は外れてしまう。
確かに副産物としての鯨肉の生産量は増加し、出荷時の単価は下がった。しかし卸業者は、安く買った鯨肉を従来のまま高値で売ったために市場価格に大きな変化がなかったのだ。 捕獲枠の拡大は、海外からだけではなく、日本の捕鯨関係者からも批判される結果に終わる。 結局、ナガスクジラとザトウクジラの捕獲計画は頓挫する。ザトウクジラは反捕鯨国の反発に配慮し、捕獲を延期した。 ナガスクジラにかんしては2005年こそ捕獲枠一杯の10頭を捕獲した。だが、その後の捕獲数は、3頭、0頭、1頭、1頭、2頭、1頭、0頭、0頭と推移する。 捕獲枠を満たせなかったのはナガスクジラだけではない。 最大935頭の捕獲を計画したクロミンククジラをもっとも捕ったのは第2次初年度の853頭。以後4年間は500頭から600頭台の捕獲数で推移し、2010年からは170頭、266頭、103頭、251頭と数を減らした。シーシェパードの妨害のなか、船舶と乗組員の安全を最優先した結果、捕獲調査が十分に行えなかったのだ。 シーシェパードを刺激した捕獲数の増加が、やがて日本の調査捕鯨を終焉へと追い込む遠因となる。
山川 徹