毒親育ちの42歳独身女性「結婚しても一緒に住んでよ」という母が重荷でも実家暮らしを続ける“地方ならではの理由”
結婚した後も手元に置きたい
職場は実家から車で10分。時間には余裕があったので、ヨガやフラワーアレンジメントなど趣味にも精を出した。結婚するまでの自由な時間を楽しみたかった。 母親は、カスミさんが就職するやいなや、どこからそんなに集めてくるのか、たくさんのお見合い話を持ってきた。 「私はお見合い相手にはウケがいいんですよ。次女で、仕事もカタい。母もそれをわかっているのか、肩書きのある人ばかりすすめてきましたね」 何人かと会ってみたが、彼女いない歴=年齢、といった風情の人ばかり。彼らは、カスミさんと会話が弾んだことを喜んだが、カスミさんは気疲れしただけだった。 相手とその親から望まれても、母親がいくら推しても、カスミさんは、交際を固辞した。 「母親の敷いたレールには乗りたくなかった。何がイヤって、近隣に住んでいる人ばかりなんですよ」
賃金の低さからくる消極的な選択
富山は車社会で、2時間もあれば近県にも足を伸ばせる。しかしカスミさんの母が想定していたのは車で20分程度の地域に住む人ばかり。結婚しても手近に置いておきたい、そんな意図を感じた。 日本では、都市部でも地方でも「結婚するまでは実家で暮らすもの」という考えが一般的で、特に未婚の女性は男性に比べると親との同居率が高いことがわかっている。 ちなみに40代にかぎっていうと、未婚の子どもが親と同居している率は富山県が全国1位。先述した持ち家率の高さと、決して無関係ではないだろう。 家を出たい、でもそのためにいますぐ結婚するわけにもいかない。20代のカスミさんは何度となく頭を抱えた。 「地方はどこも同じだと思いますが、富山はお給料が安いんです。そのぶん物価も低いんでしょうけど。長く勤めても賃金は上がらないし、転職する人も少ないから、いきなり収入が増えることも考えにくい。だから親から『ひとり暮らしするより貯金しなさい』といわれると、それもそうだと納得してしまうところがありました」 しんどいと思いながらもつづく、実家暮らし。友人から「親のことが本当にイヤなら出るはず」と言われると、責められていると感じてつらかった。理屈はわかる。でも、親のこと家のこととなると、簡単には割り切れない要素がいくつも重なってくる。 そんななか、姉が家を出た。 「結婚してしばらくは近くに住んでいたのですが、姉夫に転勤の辞令が出て、いまは千葉。彼はもともと関東の人だし、こちらに戻ってくることはないでしょう」