毒親育ちの42歳独身女性「結婚しても一緒に住んでよ」という母が重荷でも実家暮らしを続ける“地方ならではの理由”
結婚出産はしたいけれど
そんなカスミさんは、これからの40代半ば~後半の人生をどう考えているのか。 「子どもを産んでみたい、とはずっと思っていたんです。年齢的に厳しいのはわかっていながら、まだ心のどこかで可能性はゼロではないと思ってしまうところがあって。マッチングアプリもやってみましたよ。地元だと、知り合い以外の人と出会うにはそれしか方法がない。でも、話が通じない人や“ヤリ目”の人ばかりでした。私は私で、毒親育ちゆえに人の顔色を見るクセがあって、恋愛が下手ですし」 20代だった娘にお見合い写真を差し出しつづけた母親は、40代の娘をも「結婚! 孫!」と日常的に急かす。 「先日、母の口から『結婚しても、一緒に住んでよ』『私を食べさせて』と言われたんです」 カスミさんは小さく身震いする。最近、母親の体調が思わしくない。本人も不安なのだろうとカスミさんは推察するが、結婚して子どもを産み、働きながら子どもを育て、さらに親の面倒を見る……すべて求められるとなると、自分の人生は誰のためにあるんだろうと思わされる。
考えたくない、直視したくない現実
そして、生活に安心できるほどの預金も無い。 「最初の話に戻りますが、ご近所からは『お母さんのこと、見捨てたらいけないよ』といわれます。わりと近くに親戚の家が何軒もあって、私自身は交流があるのですが、母はその短気な性格から嫌われているのでサポートは期待できそうにないんです」 かつては四人で住んでいた一軒家、それに加えて墓もある。考えなければならいないのはわかっているけど、考えたくない。将来はどうなるのかわからないのに、親が老いていくいまそれを積極的に考えないのは、そのまま“先送り”を意味することになる。 遠方に住み、現実を目の当たりにしなくていい姉夫婦の気楽さがうらやましい。 「気が晴れないんですよね」とため息をつくカスミさんに共感する、40代独身女性はきっと全国にいる。 <取材・文/三浦ゆえ> 【三浦ゆえ】 編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)、『リエゾン-こどものこころ診療所- 凸凹のためのおとなのこころがまえ』(三木崇弘著、講談社)、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)などの編集協力を担当。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。
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