日銀は早期利上げ必要、対応が遅れている可能性も-吉川東大名誉教授
日銀の金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS) 市場で、12月18、19日の金融政策決定会合における0.25%利上げの織り込みは、足元で約26%と先月末の約66%から低下。一方、1月会合は約45%に上昇している。
「のりしろ」確保
植田総裁の下で、日銀は今年3月に17年ぶりの利上げに踏み切った。それまでにデフレ脱却に向けてマイナス金利政策やイールドカーブコントロール(長短金利操作)などさまざまな非伝統的な金融政策を推し進めてきたが、2%の物価安定目標の実現には至らなかった。
吉川氏は将来的には経済が悪化して物価が下落し、「日銀が利下げしなければならない局面がいつか来る」と指摘。現在の0.25%のままで利下げ局面を迎えれば、すぐにゼロ%に戻ってしまうことを懸念する。マイナス金利政策の限界はすでに学習済みだとし、いわゆる「のりしろ」を確保するためにも金利を上げられる時に上げておくことが重要だと語った。
トランプ次期米大統領の就任を来年1月に控え、その具体的政策と世界経済への影響に関する不確実性の高まりが、日銀による追加利上げの障害と指摘されている。トランプ氏は先月、中国からの輸入品に10%の追加関税を課し、メキシコとカナダからの全ての製品に25%の関税を賦課すると表明。市場は今後の言動に身構えている。
吉川氏は、不確実性が高まった場合は利上げを見送るという慎重な判断も素直なリアクションとしつつ、まだ顕在化していないのであれば起きないうちに動くのも一つの考え方だと主張する。「金融政策は機動性が命だ」とし、利上げ後に新たな情報が出てくれば、それに基づいて次の対応を考えればよいとの見解を示した。
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Sumio Ito, Toru Fujioka