需要が大揺れ「タイの自動車市場」に異変あり
それが、グローバルでBEVシフトの流れが見え始めた2017年から、タイ政府は海外からタイへの投資の呼び込み策として、BEV関連政策を強化。BEVを「ピックアップトラックの次の一手」として捉え、BEVにおいてもタイ国内でサプライチェーンを築いて生産台数を増やす構えだ。 近年は、タイ国内でBEVを製造するメーカーへの補助金制度を設けており、それを活用してMG、GWM、BYDといった中国メーカーが、タイで製造拠点の準備を進めている。
また、現状では中国からのBEV輸入には関税がかかっていないため、中国メーカー各社は将来のタイ進出をにらんで初期需要を獲得し、タイ市場に積極的に参入しようと、戦略的な販売価格を設定してシェア拡大を目論んでいる 結果、前述したように充電インフラ整備など、BEV需要に対する社会基盤が十分に整っていない状態にもかかわらず、中国BEVが一気にタイへ押し寄せる状況となっている。そのため、一時的な供給過多が発生しているのかもしれない。
一方、ユーザーの視点では今、中国BEVを買うメリットがある。理由は、物品税率の優遇措置だ。 物品税率は現状、ICE:20%、HEV:4%、PHEV:4%、EV:2%だが、EV以外の税率を段階的に引き上げることが決まっている。 ICEは2026年1月から25%、2028年1月から27%、さらに2030年1月からは29%に。HEVとPHEVは、2030年1月からそれぞれ、10%と5%に上がる。しかし、BEVは2030年1月以降も現状の2%が維持されるのだ。
中国メーカーがBEVに対して戦略的な価格設定をしていることに加えて、こうした税制優遇がユーザーの中国BEVに対する購買意欲を刺激している。 ただし、現状で中国BEVに対するリセールバリュー(再販価格)は未知数だ。そのため、中国BEVに対するアーリーアダプターが一巡した時点で、中国BEVユーザー層がさらに拡大するかどうかなど、中国BEVを主体とするタイBEV市場の将来は不透明だと言わざるを得ない。