処理水"猛反発”中国は今…放出から3週間 姿消した“迷惑電話”動画 一方で「核汚染水」批判報道続く
■相次ぐ“誤算” 「中国経済に裏目に出るとは…」
「8月はジェットコースターに乗った気分だった…」、日本への団体旅行を取り扱う担当者が口にした言葉が、とても印象的だった。8月中旬、コロナ禍で制限していた日本への団体旅行が3年半ぶりに突如、解禁になった。かと思えば、2週間後には処理水放出の影響で日本への航空券の予約はキャンセルが目立つようになる。解禁になったばかりの団体ツアーも、参加人数が足らずにプラン自体が打ち切りに。訪日客の減少は、中国の航空会社や旅行会社に大打撃となる。担当者は「経済の落ち込みを食い止めるために団体旅行を解禁したものの、報道の影響力が想像以上だったのではないか。中途半端に解禁しないでほしかった」と肩を落としていた。 また、中国人の漁師や水産業者へのダメージも大きい。日本の水産物を拒絶するだけでなく、海流に乗り中国産の魚にも影響が出ることを心配した国民の“魚離れ”が加速してしまい、中国各地で魚が大量に売れ残っているという。 当初は処理水への「猛反発」や「キャンペーン報道」で日本にのみダメージを与えるつもりが、結局、自国の水産業にも火の手が及んでしまっている。
■悪質なデマが拡散 自制の呼びかけも“イヤミ節”
中国のSNS上では、処理水放出とは関係のない映像を使ったフェイク投稿や、あたかも関係あるかのように結びつけたデマ情報が次々と拡散された。 「処理水の影響で、日本各地の魚や動物が突然変異した」「放出以降、日本各地で地震が頻発」、さらには『東京のスーパーで刺し身を値引きしたが売れ残る。日本人も海鮮を食べない」といった記事も。しかしその動画を見ると、閉店時間が近づいた際に「値引き」が始まったばかりのタイミングを切り取っているようにも見える。
■迷惑電話やSNS上のデマ いまさら取り締まれば…“弱腰”印象を懸念?
8月31日、東京電力が採取した海水で初めてトリチウムが10ベクレル検出された際、中国共産党系のメディアは「わずか数日で大幅に濃度があがった」と強調した。一方で、それが環境基準値の6000分の1だったことは伝えていない。 さらに日本の水産庁が採取した魚に異常がみられなかったことも「サンプルの魚はたった2匹だった」と対象が少なすぎると強調する表現で伝えられた。これを受けてSNS上では「この2匹を探すのに日本政府は苦労しただろう」と揶揄(やゆ)する声も相次いだ。 ただ、迷惑電話などの行為が大規模な抗議デモなどへと発展していくことを警戒したのだろうか。中国当局も少し、歯止めをかけ始めた。中国共産党系のメディアは8月下旬の社説で自制を促す文章を掲載した。ただしその理由は「日本はいじめの被害者の形を作って、同情を獲得している」という独特なもの…。日本を罰しようという行為が、かえって日本を利することになるからやめよう――という理屈だ。記事では「極端な感情をあおる発言には気を配る必要がある」とも書かれていたが、中国国内の人々の極端な怒りを中国メディアの報道が散々あおってきた現状を見た後だったので、複雑な気分になった。