処理水"猛反発”中国は今…放出から3週間 姿消した“迷惑電話”動画 一方で「核汚染水」批判報道続く
■焦り!?…危険性あおるキャンペーン報道で“孤立回避”に躍起
IAEA(国際原子力機関)は「ALPS処理水は、科学的根拠に基づき安全基準を満たしている」と評価。さらに隣国・韓国の尹錫悦大統領も理解を示したことなどから、気づけば中国だけが突出して批判している構図になっていた。 しかし中国は国営メディアを通じて、世界各国が批判しているかのような演出に躍起になった。中でも印象的だったのは、日本から遠く離れたペルーの漁師の声を紹介し、「南米でも放出に反対の声が上がっている」とアピールした動画を放送した、スタジオのキャスターが「“核汚染水”の放出方法をめぐり、日本の世論調査で岸田内閣の支持率が底をついた」と報道した点だ。 また海洋放出が始まった8月24日前後から、中国のSNSではある動画が話題になった。中国の清華大学の研究者らが調査した「核汚染水が240日後に中国沿岸部に押し寄せる」とする研究データだ。 北京の海鮮市場で牡蠣を売る男性でさえ放出翌日にはこの“研究データ”の数字を知っていた。男性は「200数日で中国に到達するなら、商売はもうおしまいだ」と怒りに声を震わせた。中国の官製メディアを通じた宣伝の結果、14億人もの人々が猛スピードで“危険な印象”をすり込まれていく…。私はそら恐ろしさを覚えた。 一方で「処理水を心配する必要はない」といった冷静な意見は、SNS上ですぐに削除。処理水の安全性を科学的に説明しようとする声も検閲の対象になっているとみられる。当局の情報操作は徹底していた。
■科学的根拠のない嫌がらせが横行…迷惑電話に抗議動画 習近平政権も黙認か
「モシモシ!」。片言の日本語で始まる「+86発信」の迷惑電話は、処理水放出の直後から日本全国で確認された。しかし実は、中国に滞在する日本人なども同様の仕打ちにさらされていた。中国にある日本料理店に「日本の食材を一切使うな」と嫌がらせ電話があったかと思えば、寝具を扱う日系企業にも「日本産の材料を使っているのか」など問い合わせがあったという。 さらにSNS上には「殺すぞ! 爆破するぞ!」などと日本各地へ抗議電話をしたとする動画までが多数、投稿された。検閲の厳しい中国でここまで投稿が広がるということは、習近平政権も黙認しているということになる。 中国では今、若者の失業率が過去最悪となっているほか、SNSでの発信が統制され、自由も制限されるなど、国内のさまざまな不満がくすぶっている。こうした国民の鬱憤(うっぷん)を晴らす場として“日本の処理水放出”を利用したようにも見える。