パリ協定は無謀? グレタさん「怒りの演説」への真剣な回答
「産業革命前」目標実現のカギは人口問題
一応、国連はその時期を具体的に「1850年」に取っているようだ。その前後5年がどんな時代かといえば、フランスで2月革命が起きたり、ナポレオン三世が皇帝になったり、ロンドンで万国博覧会が開かれたり、クリミア戦争が起きたり、アメリカでカリフォルニアが州になったりという頃だ。日本では嘉永年間で、黒船がやってきて日米和親条約を結んだ頃。 文明レベルは今と比べれば低いが、原始時代というわけではなく、それなりに文明はある時代といえる、ただし、問題は人口だ。 1850年の世界人口は約8億人だった。現在、それは約75億人にも上り、約10倍に増えている。つまり仮に我々が嘉永年間の文化水準で暮らすことを受け入れたとしても、それだけでは産業革命以前の10倍のCO2を排出してしまう。我々に突きつけられた問題は「人類は増えすぎた」という現実である。 結局、問題の本質はそこにある。人口を減らさないとどうにもならない。しかしそれは大変残酷な話だ。「産業革命当時と比べて2.0度の温度上昇を許容する」という猶予で、どの程度の人口を養えるのかはよく分からないが、人口が当時比で10倍に増えていることを考えれば、たとえば計算上、10人中9人を減らすような大幅な人口減が必要になる。減らすと言うと簡単だが、「対策を早急に行え、大絶滅が迫っている」という言葉に真正面から向き合えば、自然減を待つこともできず、人為的な死を検討することになる。当然そんなことはあり得ない。ではどうすべきか? 環境問題は、財政再建ととても似ている。まずは計算上どうしたら辻褄が合うのかを最初に机上計算で作り上げなくてはならない。それからそれを実行する。机上計算なしに「死ぬ気でやっているか! 努力が足りないのではないか!」みたいな檄ばかり飛ばしても、解決しない。根性論で環境問題が改善できるなら苦労はない。本来、批判するのであればプランも提示すべきだ。彼女の場合、年齢が16歳と若いので追及しにくいが、であるならば、彼女を利用してあの場に立たせた大人たちにプラン提示の義務があるはずだ。