パリ協定は無謀? グレタさん「怒りの演説」への真剣な回答
パリ協定実現にはCO2「80%削減」が必要
パリ協定で決まった目標値を簡単に説明すると、以下のようになる。目標値は2つある。まずは中期目標。これは各国がそれぞれプランを策定して提出する形になっている。日本政府が約束した数値は、2030年に「2013年を基準に26%削減する」という目標だ。だいぶ厳しい数値だが、政府が産業界とともに検討を重ねて出された目標値であり、方法論はちゃんとある。達成年次の遅れはあるかもしれないが、達成は可能と思われる。これについてはおそらく各国ともに同じ状況だろう。 問題は、2050年に課せられる「80%削減」だ。具体的な規定は以下の通り。 “世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする” “そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる” この2つの規定を守るために経済産業省が試算した結果、目標達成には80%削減が必要という数値が導き出された。ところが、これでは目標値が厳しすぎて実現への処方箋が書けない。
「電気を作る側」のCO2をどう減らすか?
さて図表を見てほしい。各部門別のCO2排出量が出ている。「直接排出量」の図はエネルギー転換部門、つまり発電所によるCO2排出を別枠として各部門の比率を出している。これによると、電気を作るために発電所が生み出すCO2排出は全体の41.3%あり、たとえばこれを7割方減らせば、エネルギー転換部門の排出量を15%程度まで下げることができ、概ね25%程度のCO2排出を削減できる計算になる。ただしそのためには、止まっている原発を再稼働させるだけではなく、新規に原発を建設する必要があるだろう。資源エネルギー庁の資料によれば、東日本大震災の前年、2010年の日本の電力構成比は以下のようになっている。 ・石炭22% ・石油44% ・ガス18% ・原子力11% ・再エネ5% ざっくりした数字だが、原発を現在の7倍に増やし、石炭と石油による発電を止めれば、計算上は目標を達成できる。原発が良いか悪いか、あるいは政治的に可能かどうかは、ひとまずおく。あくまでも計算のためだ。原発がダメだというなら再生可能エネルギーしかないが、こちらだと16倍にしなくてはならない。しかも太陽光も風力も天候に左右される。スマートグリッド(次世代送電網)で安定化させようと思えば、その設備投資にまたCO2が発生する。風力発電は森林への風の循環を阻害して森を枯らすこともある。原子力にせよ再エネにせよ、ハードルは決して低くはない。