「小中高サッカーで不幸になる子を減らしたい」ジーコがスカウトしたサッカーコーチが見る未来
「ハンドボール部の監督が食事の準備をめぐり部員2人の頭を丸刈りに」 「中学の部活顧問が部員の態度に怒って部活中に足払いして倒し、骨折」 これらは2024年に報じられた案件だ。スポーツ指導の現場での体罰根絶の必要性が伝えられながらも、まだそういう指導が続いている。 【写真】選手時代の上田原さん。ジーコさんとの距離感も かたや、声を荒げず、誠実に教えるサッカースクール「蹴和サッカースクール」が、大人にも子どもにも慕われ、「戦術を教えてくれる」と3校に増えているという。さらにコーチの育成も行い、日本のサッカー教育に大きく影響を与えているようだ。ではそのサッカーコーチは何が異なるのか。ジャーナリストの島沢優子さんがレポートする。
大人にも子どもにも人気のサッカーコーチ
子どもに人気のサッカーコーチはたくさんいるだろう。しかし、大人にも、子どもにも、となると数は限られる。蹴和サッカースクール代表の上田原剛さんは、両方から指導を求められる稀有なコーチだ。15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加した際、ジーコからスカウトされ鹿島アントラーズユースへ入団。大学を経て鹿島アントラーズアカデミーで15年間育成カテゴリーを指導した。 2018年ごろから、選手のみならず指導者の育成に携わりたいと考えるようになった。理由はすこぶる明快だ。 「小中高のサッカーで不幸になる子どもを減らしたい。もうそれが一番なんです」 小中高のみならず大学、プロと、全カテゴリーの指導現場を見てきた。昔のことにはなるが暴力も見たし、暴言や怒鳴り声にいたっては近年も解消されない。 「サッカーは楽しむためにやるものですよね。それなのにおかしいだろう? って、怒りの感情に包まれました。サッカーが下手なこと、未熟なことがそんなにダメなことなのか? って。サッカーが下手だからおまえはダメな人間だ、みたいな。子どもの人格まで否定してしまうわけです。それは本質ではありません」 憤りを隠さず熱く語る姿に、思わずこみ上げる。わが子を否定された経験を持つ元サッカー少年の親ならば、誰しも胸を打たれるだろう。