「そろって甲子園 夢のよう」 教え子対決に期待 元中学教諭・酒井幹司さん(64) /和歌山
<センバツ2019> 和歌山市立有功中の野球部で1学年違いの先輩・後輩の間柄だった智弁和歌山の中谷仁監督(39)と、市和歌山・半田真一監督(38)を指導した元監督がいる。同市冬野の元中学教諭、酒井幹司(かんじ)さん(64)。智弁和歌山と市和歌山が出場する23日開幕のセンバツを控え、「教え子2人が監督をしているチームがそろって甲子園に出るなんて夢のようだ」と感慨に浸っている。【後藤奈緒、砂押健太】 酒井さんは社会科教諭として市内の中学校で37年にわたって教べんをとり、2015年、有功中校長を最後に定年退職した。小中高で外野手としてプレーした経験を生かして、うち30年間は赴任先の学校で野球部のコーチや監督を務めた。厳しい指導で知られ、お盆と正月を除いて練習は毎日。散漫なプレーをした選手を強く叱責することは日常茶飯事だったという。 酒井さんにとって、監督時代の有功中野球部で、ともに主将を務めた中谷、半田両監督はとりわけ印象に残る選手だった。捕手を務めた中谷監督を「長打力があり、肩の強さは別格。真面目に練習し、チームを明るく、なごやかにする存在だった」と評価する。半田監督については「中距離打者で、1年の時から飛び抜けて守備がうまかった。成長を見越して早い段階から試合で使っていた」と振り返った。 有功中を卒業後、それぞれの道に進んだ二人とはやりとりする機会は少なくなっていた。半田監督が2004年、市和歌山商(現・市和歌山)に赴任したことをきっかけに、当時のチームメートが集まって毎年末に「酒井先生を囲む会」を開くようになり、師弟の交流が復活した。 センバツ出場が決まり、酒井さんは両チームを相次いで激励に訪れた。2月6日に訪問した市和歌山では、「あの頃はバリバリやってたな」と半田監督と思い出話に花を咲かせた。半田監督は取材に「酒井先生は厳しかったが、自分たちの調子をきちんと見てくれ、温かさと愛情があった。野球の指導者を志したのは酒井先生がきっかけだった」と話す。 今月6日には智弁和歌山の練習を見学し、「監督として初めてだから頑張れよ」と中谷監督を激励した。中谷監督は「厳しさ95%、愛情5%だったが、その5%の愛情が深かった。当時受けた本気の指導が今に生きている」と感謝する。 現在、財団職員として和歌山市内の体育館の管理人を務めている酒井さんは「仕事との調整が付けば、両校を応援しに甲子園に行きたい。2校の決勝対決が実現すれば最高だ」と開幕を楽しみにしている。