角田裕毅が「日本人はモナコに弱い」イメージを覆す ガードレールまでミリ単位のドライビングは「全部感覚」
難攻不落のモナコ。あのアイルトン・セナが史上最多の6勝を挙げ、それに次ぐミハエル・シューマッハも「モナコマイスター」として知られた。 【激写モナコマイスター】名カメラマンがとらえたアイルトン・セナ名場面フォトギャラリー! 華やかな街並みのなかを、ガードレールに囲まれた狭いサーキットが縫うように走る。路面はバンピー(荒れた状態)で、あちこちに起伏がある。 あまりに特殊なモナコという場所は、傑出したドライバーのみを受け入れ、それ以外を排除するような、畏(おそ)れにも似た感情を抱かせる。 そのモナコに、これまで日本人ドライバーは泣かされてきた。 F1では、小林可夢偉(当時ザウバー)が2011年に予選12位から5位入賞を果たしたのが最高位で、それ以外には目立った結果はない。 日本に公道レースがないからか、日本人はモナコに弱い。そんなイメージがどうしても拭えない。 しかし、そのイメージも変わりつつある。 F1直下のFIA F3では、2016年に松下信治がスプリントレースで優勝し、2017年にはフィーチャーレース3位、2019年には2位表彰台と速さを見せてきた。2023年には岩佐歩夢がスプリントレースで優勝している。 コロナ禍の影響でF2時代にモナコを体験できなかった角田裕毅も、まったくのモナコ初走行ながら初年度から予選11位をマーク。昨年も予選9位に入る速さを見せ、雨が降り出してブレーキトラブルを抱えるまではマクラーレン勢を相手に入賞圏内をキープするなど、堂々とした走りを見せていた。 角田自身も、モナコに対する苦手意識がないどころか、得意意識さえ持っている。 ガードレールに当たるか当たらないか、ミリ単位で攻める正確無比なドライビングが求められるモナコと言われるが、ドライバーはミリ単位でマシンの軌道をコントロールしているわけではなく、感覚で攻めているだけだという。
【低速コーナーの多いモナコに向けて自信あり】 「全部感覚です。ミリ単位とか、そういうのはないです。当たったら、それが限界っていうだけで。軽く当てるぶんにはいいんで、『あ、ちょっと触ったな』くらいがちょうどいいんじゃないですか? もちろん、コース幅をいっぱいに使うのも重要なんですけど、それよりもどれだけスピードを乗せていけるか。スピードが乗せられるなら、コース幅ギリギリまで使わなくてもいいですし、そこは特に気にしてないです。攻めれば攻めただけ、勝手に(ガードレールに)寄っていくんで」 その"感覚"を、3回のフリー走行で少しずつビルドアップしていき、研ぎ澄ましていくのがモナコの重要なポイントだ。そのためにも、マシンを壊して走行時間を失うようなミスは許されない。 「とにかくコース上にいることが重要なんで、走行時間を最大限に有意義に使って、徐々に徐々にペースを上げていくことだけですね」 イモラでは予選7位。実際には5位が狙える実力があったRBだが、レース週末を迎える前はあそこまでのパフォーマンスがあるとは、彼ら自身も予想していなかった。 それに比べて、低速コーナーの多いモナコに向けては、もっと自信があるという。 「低速域と言っても、コーナリングアングルだったり種類にもよるんですけど、基本的にそれほど不得意としているところではありません。期待値はイモラを迎える前よりも少し高いというか、パフォーマンスに期待できるかなと思っています。 でも、そこまで期待はしていなかったけど実際に走ってみたら速かった、ということもあるし、その逆も有り得るわけなので、実際に走ってみないとわからないかなと思います」 レース週末を迎える前の木曜日。そうやって話しているそばから、モナコのハーバーに浮かぶ特設のエナジーステーションには大粒の雨が降ってきた。 今週末のモナコは不安定な天気予報となっており、日曜以外は雨まじりの日々となっている。そうでなくても、眼前に地中海、背後に高く険しい山を抱えるモナコは、天気が変わりやすいことで知られている。