病気の体験談は参考にすべきか 注意したい2つのこと【教えて!けいゆう先生】
病気だと診断された患者さんの多くは、ネットや本などさまざまな媒体で、その病気について調べます。 特に参考にしたいと考えがちなのが、「同じ病気の人の体験談」です。 治療はつらいのか? 副作用はひどいのか? どのくらいの期間、入院しなければならないのか? 実体験を知ることで、現実味を持って今後の治療に備えられると感じるからです。 しかし医師の立場から見ると、実は体験談の扱いには注意を要します。
◇自分に当てはまるとは限らない
例えば、「がん」だと診断された患者さんが、「がん治療の体験談」を探し求めたとします。 抗がん剤治療を受けた時に味わった副作用。 手術を受けた後に感じた傷の痛み。 放射線治療を受けるために要した期間。 見つかった情報から、さまざまなことを読み取るでしょう。 実体験を参考にしたいと考える患者さんは、少なからず「自分もこうなるかもしれない」と考えます。良い体験なら、自分もそうであるよう期待するでしょう。悪い体験なら、恐怖におびえることもあるかもしれません。 しかし、ここで注意したいのが、「体験者の病状と自分の病状が一致することは確率的にはかなり低い」という事実です。 例に挙げた「がん」という病気にも、200以上の種類があります。さらには、仮に同じ「大腸がん」であったとしても、 ・がんのできる部位(大腸は1.5~2メートルもあります) ・がんの進行度(ステージを細かく分ければ10段階以上もあります) といったように全く異なります。 部位や進行度が異なれば、受けるべき治療は違います。 では仮に、部位も進行度も同じ人がいたとしましょう。それならば、同じ治療体験が待っているでしょうか? そうとも限りません。 患者さんの年齢、体型、持病の有無や種類など、身体的な特徴が違えば、適用される治療は変わり得ます。 さらに、患者さんの家族構成や仕事のスケジュール、病院へのアクセスなど、社会的な要因も治療の種類を左右します。 通院の送り迎えができる人はいるか、仕事を定期的に休むことができるか、自宅での治療をサポートできる人がいるか。こうした要素もまた、治療選択に影響を与えるからです。 体験談をそのまま自分に当てはめることが難しいのは、以上のような条件が同じ人を見つけることが難しいためです。