病気の体験談は参考にすべきか 注意したい2つのこと【教えて!けいゆう先生】
◇「発信したい人」の体験
体験談を参考にする際に、もう一つ注意したいのが、「知りうる体験談は全体のごく一部」という事実です。 体験談をネットやSNSで発信したい、と考えるのはどういう人でしょうか? もちろん、自分の体験を共有したい、と強く願う要因があった人です。 それは、誰かの役に立ちたい、という純粋な善意からかもしれません。 しかし、中には「治療で辛い思いをした」といった強いネガティブ感情や、「副作用があると聞いていたが全くなかった」という強いポジティブ感情があった人がいるはずです。 すると必然的に、体験談を探した時に目に触れやすいのは、中庸な意見より、やや偏りのある意見になりやすくなります。そうであるほど、体験談が自分に当てはまる確率は低くなります。 ネット通販の商品のレビューに、すごく良かったと感じた人と、全く満足できなかったと感じた人の、両極の意見が多くなりやすいのと同じです。 こうしたこともまた、体験談を頼りにする際に、注意してほしい点なのです。(了)
山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、累計1200万PV超を記録。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)はシリーズ累計23万部。「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「患者の心得」(時事通信)ほか著書多数。