【パリパラ】車いす女子バスケ 自力での出場権獲得は16年ぶり! チームを率いるキャプテン・北田千尋インタビュー
暗黒時代からの脱却、チームの変革
2012年からは関西のクラブチーム「カクテル」に入団した。女子強豪チームの主力選手となり、皇后杯8連覇中、個人でMVPを4回受賞するなど活躍。2014年には日本代表入りを果たした。 しかし、当時の女子日本代表は、長い低迷期にあった。「国際大会で勝てない時代でした。だから『世界で勝つって何なんやろ? どうやったら勝てるんやろ?』と、勝ち方をほとんど知らない人たちが集まって、もう一度、チームを作り直すところから始めました」 「暗黒時代」からの脱却は、容易ではなかった。「自分がいくら点を取ったとしてもチームが勝てない。本当にすごい無力感を感じた時もありました」だが情熱は持ち続けた。 「バスケしたい、レベルの高いところでやりたい、もっと上手くなりたい」の一心だった。
車いすバスケの未来を変える力
そんななか迎えたのが、パラリンピック初出場となった東京大会だ。「もっと上達したいと思ってたら日本代表の合宿に呼ばれて12名に入ったので。その時は、パラリンピックに出られるのも自国開催だったからだし、パラリンピックが特別な大会という意識はありませんでした」 結果は6位に終わった。 だが、女子決勝のオランダ対中国を観戦している時、心境に変化が訪れた。「決勝のこの舞台に立ちたい。バスケを始めてから、そういう気持ちになったのは初めてでした」コートサイドで白熱する試合を目の当たりにし、熱い思いがこみ上げてきた。 「東京パラリンピックでは、男子が銀メダルを獲ってブームにもなりましたし、自分たちが、他の国際大会ではなくパラリンピックでいい結果を残すことで、車いすバスケの未来を変えていく力があるなって。そして、その思いを次に残していけるんじゃないかと思いました」
パリで「もう一つ上の日本」へ
東京大会後、女子日本チームのキャプテンに就任。「キャプテンと言っても、自分ができることしかできないんですよ。みんな横1列。励まし合って、話しやすい雰囲気を作ったり、私が本音を言うことでみんなも本音を言いやすくなるかなとか、その程度です」 控えめにそう話すが、チームは飛躍の時期を迎えている。パリパラリンピック出場権をかけた2024年の世界最終予選で、日本チームは参加8か国のリーグで上位4チーム入り。北京パラリンピック以来、16年ぶりとなる自力でのパラリンピック出場権を獲得したのだ。 「日本が、もう一つ上にいける、未来へつながる大きな扉を開いた瞬間だったと思います」 この勝利は、チーム全体に自信をもたらした。だが課題も浮き彫りになった。「試合内容がよくなかったんです。シュート確率26%は、自分らの試合の中ではめちゃくちゃ低い数字で。これで喜んでいたらマジでやばいと思いました」 この冷静な分析がさらなる高みへの挑戦を後押しする。パリで戦うのは、世界トップレベルの8チーム。日本にとって、全ての対戦相手が格上となる。それでも、パリでの目標は明確だ。 「1試合でも多く勝って、ぶっちゃけもう番狂わせを起こして、メダル争いに食い込めたら最高かな」
金メダルをも超えた目標とは
キャプテンとしてチーム全体を考えつつ、自身の向上心も探求心も尽きることがない。「私、世界一の選手になりたいと思ってるんです。仮にパラリンピックで金メダル取ったとして、それで世界一かと言ったら、そうじゃないじゃないですか。自分が満足するところまで行きたい。世界一車いすバスケを楽しんでいるな、って思えるような。勝敗もメダルも、そのための手段であって目的ではないんです」 メダルや順位では表せない自分だけの「世界一」を極限まで追い求める。果てしない自己との戦いの中で、北田が見せるであろうパリの「番狂わせ」に、今から期待が膨らむ。 取材・撮影/越智貴雄[カンパラプレス]
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