ふるさと納税「国産熟成牛肉」はNGなのに「輸入羊肉ジンギスカン」はOK…なぜ? 透けて見える“制度の問題点”とは【税理士解説】
2025年10月からポータルサイトの「ポイント制」も禁止に
加えて、総務省は6月25日、ふるさと納税制度について仲介サイトによる「ポイント付与」を2025年10月から禁止する方針を示した。 これは、ポイント付与分が、地方公共団体から仲介業者に支払う経費に上乗せされていることを問題視したものである。
最終的に「増税」につながるリスクも
黒瀧税理士は、ふるさと納税の制度は、自治体の税収の流出を招くのに加え、国税・地方税の「増税」につながる可能性があると指摘する。 黒瀧税理士:「ふるさと納税をした人が居住する自治体では、その分の税収が他の自治体へ流出してしまいます。 税収が減る自治体は、足りない分については、地方交付税交付金で補うことになります。その財源は結局のところ国の税金なので、増税でまかなうことにならざるを得ません。 さらに深刻なのは東京23区のような、地方交付税交付金の不交付団体です。財源が確保できなければ、区民税の増税などで対応せざるを得ません」 ふるさと納税で寄付を受けた自治体の側はどうだろうか。 黒瀧税理士:「寄付額から、返礼品の仕入れの費用、事務に係る諸費用、仲介業者への手数料などの経費が差し引かれます。 経費の額が『50%ルール』の範囲に収まっていたとしても、実質的な手取りは寄付額の50%程度にとどまります。 したがって、全国の自治体トータルでみると、ふるさと納税の制度があることによって、実質的な財源が減っている計算になります」 この点については、『経費』の支出によって、返礼品を提供する地場の業者や、ポータルサイトを運営する仲介業者などが潤い、結果として税収の増加につながるというプラスの効果があるとの指摘もあるが…。 黒瀧税理士:「そのような側面があることは否定できません。しかし、地場の業者を潤わせるためならば、ふるさと納税のしくみは技巧的で遠回りといわざるを得ません。より直接的で効果の高い方法は他にもいろいろ考えられます。 また、仲介業者は地方の活性化とは直接関係ありません。現に、仲介業者に支払う手数料が『中抜き』などとよばれ問題視されています。 国がふるさと納税の制度を今後も継続するならば、制度の抱える問題点・副作用を十分に理解したうえで、手当てしていく必要があるでしょう」