ふるさと納税「国産熟成牛肉」はNGなのに「輸入羊肉ジンギスカン」はOK…なぜ? 透けて見える“制度の問題点”とは【税理士解説】
「返礼品競争」の過熱で相次ぐ制度改定
ふるさと納税については2023年10月に大きな改定が行われた。当時、「改悪」と報道されたことを覚えている読者も多いだろう。 もともと、ふるさと納税には以下のルールが設けられている。 ・返礼品は「地場産品」に限る(地場産品基準) ・返礼品の仕入れ額は寄付額の30%以内(30%ルール) ・経費の総額は寄付額の50%以内(50%ルール) 黒瀧税理士は、2023年10月の制度改定が「地場産品基準」と「50%ルール」をさらに厳格にしたものだったと説明する。 黒瀧税理士:「まず『地場産品基準』については、ごく大雑把にいえば、その自治体に縁もゆかりもない品は認められないということです。この基準に関して、新たに『熟成肉』と『精米』について『当該地方団体が属する都道府県の区域内において生産されたものを原材料とするものに限る』と定められました。 これは、大阪府泉佐野市の『熟成肉』と『精米』が問題視されたことがきっかけとして『狙い撃ち』的に定められたものです。 次に、『経費の総額』の計算方法が厳格化されました。それまで、経費への計上が義務付けられていない、いわゆる『隠れ経費』があることが指摘されていました。いわゆる『ワンストップ特例』(※)にかかる費用、『寄附金受領証』の発行の事務にかかる費用、『仲介業者』への手数料などです。それらもきちんと含めなさい、ということです」 ※確定申告不要で、オンライン申請等によって簡便に税額控除を受けられる制度
なぜ「国産熟成牛肉」がNGで「輸入羊肉のジンギスカンセット」がOKなのか
ここで一つ、疑問が生じる。泉佐野市以外の自治体では、輸入した原材料を用いた返礼品を設定しているところも少なくない。 たとえば、肉については、岩手県遠野市の「ジンギスカンセット」は、オーストラリア産等の輸入羊肉を原材料としている。泉佐野市の「熟成肉」は国産の牛肉だったのにNGとなったが、なぜ、遠野市の「ジンギスカンセット」はOKなのか。 黒瀧税理士:「岩手県遠野市では、古くからジンギスカンが名物として内外に認知されています。盆や正月や祝い事等のたびにジンギスカンを食べる習慣が定着しており、市内にジンギスカンを提供する飲食店や、ジンギスカン用の羊肉を扱う精肉店が多いのです。 また、返礼品の『ジンギスカンセット』も、市内の業者が肉を仕入れ、ジンギスカン用に加工を加え、かつ専用の『タレ』もつけて『遠野ジンギスカン』として販売しています。 したがって、遠野市の『ジンギスカンセット』は輸入羊肉を使用してはいても、名実ともに遠野市ならではのものとなっているので、『地場産品基準』をみたしセーフです。 これに対し、泉佐野市の『熟成肉』と『精米』については、『泉佐野市ならでは』という事情が認められなかったということです」 ただし、この理屈は一歩間違えば、たとえば自治体を挙げて新しい名物を作り出し、ふるさと納税の返礼品としてもPRしていこうという動きの妨げになるリスクも抱えている。