斜陽産業を再生へ スキー場を甦らせた経営戦略とは
リスクはあった。「この国境スキー場というのはウチのグループの中でも一番、低標高なんですよ。北海道除いて本州ではね。だから積雪は大丈夫かなとか。年によっては雪がない年があったのも知っていますので、そうなれば大きなリスクもあるし大丈夫かなっていうのを思いながらも、まぁでもスキー場できるんならやってみよう」。スキー場経営がしたいという思いの方が上回った。 更に「宿泊施設を売るのに、スキー場と一体経営だとものすごく色んな売り方ができるというのも、ずっと考えていました。宿はこうして売りたいけどスキー場との折衝がうまくいかず、その売り方ができないがゆえにお客様が取れない、とか。営業時間の問題とか料金面とか。そういうのも自分が営業をしてきて感じていたので。『これとこれをセットで売れば、売れるんじゃないの』みたいなのが何となくあったりとか。そういうところで入っていきました」。 ■最初の話は黒姫高原。ホテルとスキーの一体運営 買収は国境スキー場が1つ目だが、その前にある話が持ち掛けられていた。実はこれが後に国境スキー場取得のきっかけになった。ある時、長野県の老舗ホテル、黒姫ライジングサンホテルから視察団が訪れた。「兵庫の方で学校さんばっかり泊めてて、えらい繁盛してる宿があるらしいぞ」という噂が遠く長野にまで伝わっていたのだ。 「社員御一行様がバスに乗って来たんですけど、ボクも隠さないので全部言ったんですよ、色んなことを。『こうしたら儲かりまっせ』、『こういう風にオペレーションしなあきまへんで』、『セクション分かれてたら儲かりまへんで』みたいなね。すると後日、社員から話を聞いたオーナーが「むしろ、あなたが(このホテルを)やってくれないか」と頼んできたのだ。そしてそのホテルには黒姫高原スノーパークというスキー場も付いていた。 「ホテルとスキー場が一体運営できるなんて夢のような話だと思ったので、それが挑戦できるチャンスがあるなんてすごいなと。すごくやりたかったんです。ここはね」。実はこれこそが一ノ本氏の最も求めているものだったのだ。「これを煮詰めている間に国境の話が出てきたから、どうせ黒姫でもやるんだからやろうと」。すぐに決心した。結果的に順番は前後したが、黒姫の話が先にあったからこそ国境の買収にも踏み切れたと言える。