百貨店大閉店時代でも盛況~「東京にある地方百貨店」
〇松屋の独自戦略2~メンズとレディースが合体 2023年に古屋は5階の紳士フロアをリニューアルし、新たな売り方を始めた。 「メンズとレディースを1つの区画の中で展開するコンバインという売り方です」(ショップMD部・木村麻里) 通常、百貨店では同じブランドでもメンズとレディースは別のフロアで展開する。それを松屋の5階では大半の店をコンバインにした。 「これまでは待ち合わせは◯◯でねと、男女が別々で買い物して戻ってくることが多かったのですが、このフロアだったら、2人で試着して隣に並んで鏡に映したりもできます」(木村) 夫婦でパーティーや子どもの入学式の服を選ぶ場合、「例えば女性がこの服を選んだ時には男性はスーツのネクタイにピンクをさしてみたり……」(木村)ということができる。 このリニューアルで、売り上げは1.7倍にアップした。
〇松屋の独自戦略3~レアな店を誘致 スイーツ売り場で人気の「ナーディル・ギュル」。2022年11月、トルコで180年続く人気の店を初の海外店舗として呼び込んだ。看板商品は「バクラヴァ」というお菓子。薄い生地を何層にも重ねたトルコの伝統菓子で、今や松屋のスイーツ売り場の人気ベスト5に入る(「ピスタチオバクラヴァ」4個入1944円)。
4年前、世田谷・九品仏にオープンした気鋭の店「アンフィニ」も本店以外は松屋にしか出店していない。その味に惚れ込んだ松屋のバイヤーが引き入れた。1番人気はベルガモットという柑橘類がメインのムースに果汁でつやがけを施した「パルファン」(767円)。バラの花びらをあしらったムースの中にジャスミンなどを使ったブリュレやイチゴのコンポートが入っている。 松屋に出店した理由は「決まったマニュアル通りではなく柔軟に対応していただける。小さい店のブランドのことも理解してくださる」(オーナーシェフパティシエ・金井史章さん)だという。 2月、松屋銀座最大のスイーツイベント「GINZAバレンタインワールド」が開催された。世界82ブランドのチョコが集結。約2週間のイベントに10万人が来場した。 特設バーでは酒の種類ごとに合わせて作られたBAR専用チョコを提供していた。 BAR専用チョコを作っている「アトリエAirgead」ショコラティエの須藤銀雅さんは、「一般販売はしないで日本全国の正統派のBARにだけ卸している。お酒とチョコレート両方が揃わないと出したくない」と言う。 そこで松屋は会場にBARカウンターを作り、BAR専用チョコレートの出品を実現させた。 「『幸せになれる場』を作っていくことをミッションにしているので、今そこに一生懸命取り組み、投資をしていかないと負けてしまうと思っています」(古屋)