百貨店大閉店時代でも盛況~「東京にある地方百貨店」
逆風にも強い独自戦略~ミッションは「幸せになれる場」
〇松屋の独自戦略1~地域を生かした売り場作り この日古屋が向かった「全銀座会」は、銀座の商店会や町内会などを束ね、街を盛り上げていく組織だ。 「銀座の街がダメになったら全部の店が沈んでしまう。松屋は銀座の指標というか、引っ張っていただける存在だと思います」(全銀座会 事務局長・竹沢えり子さん) 銀座といえば、古くからの飲食の名店が立ち並ぶ美食の街。そうした店がコロナ禍でピンチになった1年半前、松屋は冷凍食品売り場「ギンザ フローズン グルメ」を作った。 そこには創業100年、肉の名店として名高い「銀座 吉澤」の「松阪牛シルクハンバーグステーキ」(1620円)が。松阪牛を使った贅沢でジューシーな逸品だ。 洋食の老舗「銀座みかわや」の「国産和牛タンシチュー」(1万1880円)も昔から変わらない銀座の味だ。さらに「銀座アスター」の中華など、約55の名店の350種類の冷凍食品を揃えている。この売り場をオープンすると売り上げは前年の約6倍に。銀座の店とウィンウィンの関係を築いた。 「松屋が銀座に貢献してくれているという認識が強いし、松屋が何かしようと思った時には、自分たちも『一緒にやりましょう』という思いになれます」(「銀座 みかわや」4代目店主・渡仲晋平さん) 銀座店食品部の今井克俊は新たな店とタッグを組もうとしている。「はち巻岡田」は1916年創業の和食の名店だ。看板メニューの「鮟鱇鍋」や鶏スープ「岡田茶わん」を求めて、橋本龍太郎元総理や作家の山口瞳など、多くの著名人に愛されてきた。 「なかなか和食の商品ができていなかったので、伝統的江戸料理が冷凍食品で表現できたら」と言う今井に対して、3代目店主の岡田幸造さんは「今まで冷凍食品には抵抗がありましたが、『冷凍の概念を変えたい』と言っていたので」と応じた。 松屋が商品化を狙うのは「軍鶏鍋」。冷凍を受け持つのは銀座の洋食店「銀座日東コーナー1948」だ。自社で持つ急速冷凍機を使い肉や野菜の細胞、繊維を極力壊さずスープまで冷凍できるという。まさに銀座にあるからこそできるプロジェクトだ。