意思に反して身体が動き、声が出る<トゥレット症>当事者「中高で僕の試験時間が1.3倍に設定されていたワケ。それは『優遇』などでなく、あくまで…」
◆合理的配慮は「優遇」ではない また、ほかの生徒であればマークシート形式で受ける試験も、マークシートをうまく塗りつぶせないという理由でマルをつける方式で回答ができる答案用紙にしてもらったり、答案用紙の大きさ自体も、約2倍の大きさのものを使わせてもらったりしていました。 「自分だけ特別待遇でいいのか」と引け目を感じるかもしれませんが、「自分ができないこと」を学校側に伝えるのを恥ずかしがることはありません。 合理的配慮は「優遇」ではなく、僕たちが普通の人たちと一緒に学ぶために、マイナスをゼロにしてもらうために必要な試みだと思います。 のちに大学に進学した後も、テストなどの際は、同じように合理的配慮を受けていました。 もしかしたら、そんな僕の様子を見て「なんで酒井だけ試験時間が長いんだ。ずるいじゃないか」と感じる生徒もいたのではないかと思います。 ただ、学校側が配慮してくれたのか、そういった声が僕の耳に入ったことはありません。そんな環境で学生生活を送れたことは、とてもありがたいことだったと思います。
◆「平等」と「公平」は違う 「合理的配慮」は難しい話ですが、その人の事情によって工夫するのは、何も病気がある人に限った話ではありません。 たとえば、身長が低い人であれば、高いところにあるものを取るときには台を使います。目が悪い人は眼鏡をかけます。 これはみんなより優遇されたいというわけではなく、何かしらハンデを抱える人たちが“みんなと同じスタート地点に立てる”ように必要な行為だと思います。 仮に“平等”に、病気のない人が僕と同じような配慮を受けたとしたら、その「差」は埋まりません。 しかし、生まれている差の分を埋めることによって、“公平”な状態をめざすのが合理的配慮だといえます。 僕は周囲に恵まれていたので、周りの配慮によって公平な環境を維持し、自分の希望する道に行くことができました。いま思い返せば本当にラッキーだったと思います。
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