どうなる?上場で注目、東京メトロ「2つの新路線」の現在 有楽町線と南北線の「延伸」は何をもたらすか
この2つの課題を一体にして前進させたのが、前述の2021年の答申だ。同答申は新線について「東京メトロに事業主体としての役割を求めることが適切」としたうえで、経営に悪影響を及ぼさないよう、国と自治体が事業費の約6割を負担し、残りは「都市鉄道融資」の制度により東京メトロがまかなう方策を示した。 あわせて、株式上場については「(新線の)事業主体となることと一体不可分のものとして東京メトロ株式の確実な売却が必要」との考え方を示し、「国と都が当面株式の2分の1を保有することが適切である」としたうえで、「国と都が共同で手続きを進め、同時・同率で売却をすることが重要である」とした。半分を保有し続けるのが適切としたのは、新線建設への影響を避ける狙いがある。
絡み合っていた課題がクリアになったことから、東京メトロは2022年1月に両線の鉄道事業許可を申請。同年3月に許可され、その後さまざまな手続きを経て今年6月に都が都市計画決定を告示し、工事着手に向けた準備が整った。 有楽町線の延伸で期待されるのは所要時間の短縮と鉄道空白地帯の解消、そして東西線をはじめとする周辺路線の混雑緩和だ。豊洲―住吉間を電車で移動する場合、現在は2回の乗り換えが必要で約20分を要するが、新線が開業すれば両駅間が約9分で結ばれる。
線路は豊洲駅から北東に向かい、豊洲運河、汐見運河、さらにJR京葉線、東京メトロ深川車両基地の下を経て東陽町へ。その先は四ツ目通りの下をまっすぐ北上し、半蔵門線・都営新宿線の住吉駅に至る。 途中駅は東陽町駅のほか、枝川、千石(ともに仮称)の2駅を新たに設置する。両駅については今年6月、東京メトロが駅出入口用地の公募を開始した。東京都都市整備局の資料によると、駅出入口は1駅2カ所で検討している。 ■工事着手はいつになる?
一方、南北線の延伸は、白金高輪駅から目黒通りの地下を南西に進み、都が整備する都市計画道路、環状第4号線の下を経て品川駅高輪口の前を通る国道15号の直下に設ける駅へと至るルートだ。 開業すれば品川駅に乗り入れる初の東京メトロの路線となり、地下鉄ネットワークから品川を経由して羽田空港へ、さらには将来のリニア中央新幹線へのアクセスが容易になる。現在、約19分かかっている品川―六本木一丁目間は約9分に短縮される。