女性は「地方にいろ」と言うのか…「消滅可能性都市」増田レポート最新版が押し付ける「少子化の責任」
地方にだけ解決を迫る
子どもが生まれない原因は何か。それは都市に潜んでいるということだ。なかでも東京・首都圏の合計特殊出生率が低い。それに準じて同様に政令指定都市や県庁所在都市の出生率が軒並み低いのである。その首都圏・大都市圏に、若い人口が集まっている。まさに都市はブラックホール。人口蟻地獄だ。 さて、このことこそ実は、10年前の地方消滅レポートが明確に示していたことであった。日本の止まらない人口減少、その原因である少子化、それを引き起こしているのは東京一極集中であると。 そして、この東京一極集中を止めよ、ということで地方創生も始まったのである。にもかかわらず持続可能性レポートはそこには直接触れず(ただブラックホール型自治体があることを指摘するだけである)、地方にだけその問題解決を迫る。 今回のレポートを紹介する人口戦略会議の解説を見ていると、政府の地方創生はダメ、我々が警告したことをしっかりやらないから人口減少に歯止めがかからなかったのだ、今度こそチャンスを逸してはいけないという発言が目立っていたように思う(とくに副座長の増田寛也氏)。 まず奇妙なのは、10年前の地方消滅レポートの功績により、増田寛也氏をはじめ関わったメンバーの多くが地方創生の要職に就いていたはずである。その立場から政府を批判する姿勢がよく分からない。 他方で、たしかに初代地方創生大臣・石破茂氏は自治体間競争を煽り、このことが政府と地方自治体の関係をいびつなものにして、人口/予算、さらにはふるさと納税などの獲得競争を導いたことは反省すべきである。 だが、政府はこのレポートのように、自治体消滅をちらつかせるようなことはしていない。「なくなってよい地域はない」は、亡くなった安倍晋三元首相のことばである。また石破氏のいっていた「競争」も、政策競争であって、一方で「ナショナルミニマムは守る」と明言していたのである。