元ロッテ・島孝明 異例「区切り」のトライアウト挑戦の裏側 独立Lなど4チームからオファーも「修士やりきりたい」“異色の指導者”目指す
今月14日、NPB主催最後の合同トライアウトがZOZOマリンスタジアムで行われた。その大トリで登板した男が会場を沸かせた。元ロッテの島孝明(26)だ。最速151キロを計測するなど、150キロ超えを連発。自身約5年ぶりのマウンドで輝きを放った。 「いい人たちに恵まれてきたと感じました。挑戦してよかった」。久々に味わう特別な感情。衝撃の投球に「返信が追いつかない感じは、ドラフト以来ですね」と知人から50件以上もメッセージが届いた。 島は16年のドラフト3位でロッテに入団。西武・今井や楽天・早川らとともに高校日本代表にも選出されるなど、大きな期待を受けた。ただ、1年目の夏頃から思うようにボールを投げられないイップスになった。そこからは、投げられる日と投げられない日が続く不安定な状態。「何をしたらいいのか分からなかった。毎日不安だしストレスもかかる。生きてる心地がしないというか、暗い時期でした」と振り返る。 結局3年で戦力外通告を受け、21歳でプロの世界に別れを告げた。「ろくに野球もできてなかったので、切り替えは早かった」と次のステージを模索。チームで外国人選手とコミュニケーションをとる機会があり「違う言語で話すのは楽しかった」と英語の勉強をしたいと漠然と思っていた。ただ、英語専攻の大学の受験に失敗。時期がギリギリだったこともあり、セカンドキャリア選考で国学院大人間開発学部に進学した。 ここで転機を迎えた。スポーツの動作解析だ。「そんなものがあるのは知らなかったし、なんとなく体育系の学部に入った」と振り返る島。さまざまな教授や先生と出会い「感覚だったものを数値化して目に見える形にするのが新鮮だった」と勉強に励んだ。4年間で中高の体育教員免許も取得すると、「学部でやりきれなかったこともあった」と今春から慶大の大学院に進んだ。そこで徐々に野球を再開。「自分のキャリアに区切りをつけたい」と最後のトライアウトを受検した。 自身も驚きの投球を終え、独立リーグとクラブチームの計4チームからオファーがあった。「評価してくれる部分はありがたいですし、自分の自信になりました」と話すが「やっぱりまだ学生。修士をやりきりたい」とオファーは全て断った。 今後については「技術を教えるだけじゃなくて、データとかいろんな視点持ち合わせてサポートしたい」と“異色の指導者”を目指す。「毎日刺激的なことはあるし、気持ちはすごく充実している。これまでの感じ(セカンドキャリア)は納得してるかなと思います」。プレーヤーとしての区切りをつけ、新たな野球人生が始まっている。(デイリースポーツ・滋野航太)