「マンションの管理費」高騰は他人事じゃない…じつは既存マンションにも迫っている「ステルス値上げ」の波
マンション管理費のステルス値上げで下がる「質」とは?
ステルス値上げによってまず下がるのは、管理会社の「担当者」の質です。管理会社には、当然ながらエース級の方から新卒の方、契約社員でフロント業務をされている方まで、さまざまな担当者が在籍しています。管理費が上げられないマンションは、管理会社からすれば利益が低いマンションです。当然ながら、エース級の担当者は配置されづらくなります。 管理会社の役割は、いわば「ディレクション」です。管理計画を立て、その計画が遂行されるよう管理員や清掃会社、警備会社、設備保守点検業者などを手配し、マンションの安全性や快適性、資産性を維持します。マンションの管理とは、こうしたさまざまな業者によるサービスのうえに成り立つものです。それらをディレクションする担当者の能力次第で、管理の質は良くも悪くもなります。 もちろん、清掃や植栽剪定、保守点検の頻度を下げたり、管理員や警備員の勤務時間を減らしたりする必要性も出てくるでしょう。そうなれば、マンションの景観や安全性、セキュリティなどにも影響が出かねません。
管理費の値上げより怖い「管理会社の撤退」
インフレや人件費の高騰に加え、人手不足もまたマンションの管理費の値上げやステルス値上げが相次いでいる根本的な要因の一つです。管理会社だけでなく、管理会社から派遣される管理員や再委託する清掃会社、警備会社など、ありとあらゆる業界で人材不足が深刻化しています。 人材が不足し、あらゆるモノの値段が上がっている今、管理委託費を変えずに、これまでと変わらない管理体制を維持することはできません。管理費の値上げができないマンションの管理の質が下がってしまうのは、いわば当然のことです。管理の質を維持するには、一定の値上げを許容せざるを得ないでしょう。とはいえ、単に管理費を上げればいいというものではありません。まずは「値上げが必要な理由はなんなのか」「過剰にお金をかけてしまっている部分はないのか」といったことを精査するために、管理会社と対話を重ねる必要があります。 避けるべきなのは「値上げしてほしい」という管理会社からの打診を、検討もせずに突っぱねることです。「管理委託費を上げたい」と管理会社から打診されると、敵対心のようなものを持つ管理組合も見られます。しかし、管理会社と管理組合が対立していては、健全な管理はできません。 実は今、管理会社から見放されてしまう管理組合が増加しています。人材が減り、あらゆるモノの値段が上がる中で、管理委託費の値上げに応じてもらえないとなると、管理組合はそのマンションから撤退せざるを得ません。「管理会社は他にもある」と考えるかもしれませんが、どの管理会社も状況は同じ。他社に見放されたマンションの管理を引き受けてくれる管理会社を探すのは難航するはずです。管理会社に見放されてしまうと、より顕著に管理の質が低下し、安全性や快適性、資産性も損なわれていくおそれがあります。