凱旋帰国の井上尚弥が語った英国衝撃TKO劇の真実と今後
2年前の初の海外試合となる米国ロスでの試合では計量後にうまくいかなかったリカバリーにも万全を期した。計量の後にステーキ店にいったが、二キレほどしか食べず、すぐにホテルに帰り、日本から持参してきた炊飯器で炊いた、ご飯、特製の雑炊、蕎麦、うどんなど、これでもか、とばかりに炭水化物を補給した。IBFは当日計量があったが、その時点で「力がみなぎっていた」という。周囲の現地での手厚いサポートにも助けられた。ジムも井上が練習する間は貸し切りにしてもらい暖房もつけてもらった。それは「ジムの温度が気になっていた」とまで細心の注意を払う井上を安心させた。 「思ったより早く終わったが内容的には100点」 井上が、そう言うと、真吾トレーナーは「1ラウンドの力みと差し引き80点」と辛めにつけて、チャンピオンを「なかなか(ハードルが)高いですねえ」と苦笑いさせた。 「めちゃくちゃ楽しかった。あの1ラウンドを見てくれた人がハラハラドキドキして楽しかったと言われるのが嬉しい。欲を言えば、あれを2、3ラウンド続けたかった。そして4、5ラウンドで、あの結果に持っていくのがベスト。それくらいファンを楽しませながら」 やはり、この男。モンスターである。 さて次なる相手は5階級王者のドネアである。 「次はレジェントとの試合が決まっているので気は抜いていられない。左フックに注意したい。いつも通りに距離が重要になってくる」 ドネアとは直接ジムで指導を受けるなど親交が深い。 「リスペクトし参考にしていた選手といざ戦うとなってやり辛い。気持ちの切り替えができていない。これから、そこを取り払って対戦モードにしていかなくちゃいけない。試合は試合。倒しにいかなくちゃいけない」 ドネアの準決勝は、怪我で棄権したWBO世界同級王者、ゾラニ・テテ(南アフリカ)の代役の格下選手にさえ、左のカウンターに苦しめられ、最後は代名詞の左フックでフィニッシュしたが、スピード、パワーとも衰えを隠せなかった。 ――ビッグネームだが全盛期を過ぎて衰えが目立つ? 「それは感じている。正直、ファンなら誰が見ても思うでしょう。でもキャリア、実力で今の地位を保っている。一番怖いのはキャリア。左は距離さえ間違えなければまずもらうことはない。でも、どの選手も対策しながら倒されている。何かが、そこにある」 油断はない。ライオンはうさぎも全力で狩りにいくのである。 3試合続けて2ラウンド以内のKOが続き、4試合連続の期待がプレッシャーにはなるだろうが、「重圧はあったが、今回の試合でふっきれたかな」ともいう。 ドネアとの決勝舞台の開催場所も日程もまだ決まっていない。 井上は「一番の理想としては日本でやりたい。ドネアファンも多いしね。東京では会場がなく、WBSSの照明など機材を入れるために大きな場所でないと無理のようだけど、日本なら大阪でも地方でも。時期は年内ならいつでもいい」 まだ東京以外で試合をしていない“生モンスター”が見られるのならファン垂涎だろう。