凱旋帰国の井上尚弥が語った英国衝撃TKO劇の真実と今後
海外メディアは、さかんにドネアの次に興味を抱く。米の専門サイト「ボクシング・シーン」は、「ドネアは9分間もてば十分」とまで書き、元WBC世界バンタム級王者、山中慎介氏をドーピングと体重超過という“反則”で引退へ追い込んだ無敗のルイス・ネリ(メキシコ)の名やフェザー級の“スター”でPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンシップ)の秘蔵っ子であるWBA世界フェザー級スーパー王者のレオ・サンタクルス(メキシコ)の名を挙げて5階級制覇の可能性について論じている。 ――ファンはドネアの次に注目しているけど? 「何も決まっていない」 井上は言葉をつぐんだ。 減量の様子からすると、バンタム級は、そろそろ限界かと思うが、スーパーバンタム級への転級については「まだバンタムでできる。階級は、フィットしない階級に無理に上げようとは思わない。バンタムで力を発揮できる限りはバンタムでやりたい。スーパーバンタムが体に合うなと思ったら上げる」と断言した。 スーパーバンタム級への転級は、ネリ、そしてドネアとの対戦を流したWBO王者、ゾラニ・テテ(南アフリカ)の2戦を終えてからなのだろう。 だが、井上を取り巻く世界のマーケットの動きは激しくなっている。前WBA世界ミドル級王者、村田諒太やWBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪らが契約を結んでいる世界屈指の大手プロモーターのトップランク社が破格のオファーを提示しているという。 「条件もいい。そこで結果出していけば凄い景色が違ってくるんじゃないですか」 井上は世界の歴史に名を残す超トップボクサーへの階段を駆け上がっている。 さて真吾トレーナーvsクルス・トレーナーの因縁の後日談である。 試合後、リング上でロドリゲスは、すぐに井上、真吾トレーナーのところへきて互いの健闘を称えリスペクトの意志を示したが、あのトレーナーはついに来なかった。 だが、井上がバックステージで取材を受けているときに、たまたま、そこをクルス・トレーナーが通りかかった。真吾トレーナーは無視したが、向こうから近寄ってきて「グッドファイト!」と握手を求めてきた。 「最後に仲直りができて気持ちがよかった。それですっきりしたね」 だからボクシングは素晴らしい。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)