ライバルのアウディS3とゴルフRを迎え撃つ! BMWの新型ホットハッチ M135xドライブにモータージャーナリストの森口将之が試乗!!
激戦区のCセグメントの注目車種!
ライバルと同じ前輪駆動になってからは2代目となる新型1シリーズ。まずは最も高出力なエンジンを積み、それを伝えるために4輪駆動を採用する、1シリーズの頂点に立つ、Mパフォーマンス・モデルのM135を借り出してみた。 【写真23枚】インパネのカーブド・ディスプレイ、スライド式のシフト・セレクターは斬新 第2世代に進化して新しくなったM135xドライブの詳細画像はこちら ◆前輪駆動の第2世代 かつては希少なFRのハッチバックとして注目されていたBMW1シリーズも、横置きパワートレイン前輪駆動の第2世代になった。まず日本に導入されるのは、1.5リッター直列3気筒ターボ前輪駆動の120と、2リッター直列4気筒ターボ4輪駆動のM135xドライブだ。ここでは後者を取り上げる。 いずれも数字の末尾にiがついていないが誤植ではない。今後は、もともとはインジェクションを示す記号だった、ガソリン車を表すiの文字が省かれることになったようだ。代わりにリアにつく車名のロゴは1がほかの2桁より大きくなり、シリーズ名を明確に示すようになった。 スタイリングはCセグメントのハッチバックとしてはかなりウエッジシェイプが強い。それを強調すべく、先代よりキドニー・グリルの丈が詰められた。7シリーズならまだしも、このクラスに巨大グリルはそぐわないと感じていたので、新型の顔つきにホッとした。 同格のSUVであるX1との違いも目立つ。あちらのキドニー・グリルは大きめなのに対し、ボディ・サイドはすっきりしていて抑揚は控えめだ。ファミリーユースを狙ったX1に対し、パーソナル・カーとして位置付けていることが伝わってくる。 インテリアは新型1シリーズの立ち位置をさらに明確にしていると感じた。X1と共通かと予想したインパネは専用設計で、エアコンのルーバー周辺をシルバーのパネルで覆い、そこを赤紫青のMカラーのイルミネーションで彩ったりして、カジュアルなドライバーズ・カーであることをアピールしている。 Mカラーはインパネのステッチやシートベルトにもあしらっており、前席には出来の良いスポーツシートが奢られる。しかし、武闘派というイメージが薄く、気軽に付き合えそうな雰囲気を持つ。それは、このインパネのデザインによるところが大きい。 ◆6気筒を思わせる エンジンは、低回転ではFR時代の6気筒を思わせる重厚な回り方で、回していっても4気筒としてはかなりスムーズだ。ただし排気音は4気筒ターボを意識させる太い響きで、BMWなのだからエンジン・サウンドを聴かせる方向に仕立ててほしいとも思ったが、ホットハッチっぽい演出ではあった。 速さについては、最高出力300ps、最大トルク400Nmを発生するだけに、あらゆるシーンで強力。しかもX1同様、パドルシフトのマイナス側を長く引くとブースト・モードが作動し、秒間、さらに切れ味が鋭くなる。 脚まわりははっきり硬いが、ボディ剛性が屈強と言えるほどなので、ガツンとは来ない。優秀なスポーツシートのおかげもあって、1時間ぐらいであれば何の不満もなくドライブを続けられた。 最初に書いたようにM135は4駆であり、そのハンドリングはFRとは明らかに違う。前輪を駆動していることはステアリングに常時伝わるし、リアに駆動が掛かっていることは随所でわかるものの、それが主役になることはなく、4輪をバランス良く使ってコーナーを駆け抜けていく。安定性を重視したチューニングという印象を受けた。 価格は698万円と、3シリーズ・セダンの320iとほぼ同じだ。同じ2リッター4気筒ターボを積むとは言え、パワーとトルクに大差はあるが、多くの読者が思い浮かべるBMWらしさを求めるなら、320iのほうがお勧めだろう。 1シリーズはむしろ、BMWブランドに新しいユーザーを引き入れるための車種だと思う。激戦区のCセグメントでは、求められる実用性や快適性を備えていなければ、比較対象にすら上がらない。それを考えれば横置きパワートレインとするのは自然な成り行きだろう。 それにデザインはBMWらしさ、Mらしさをカジュアルタッチで表現できていて、同格のアウディS3やフォルクスワーゲン・ゴルフRなどの中から、これを選ぼうという気にさせる。長年プレミアムスポーツ・ブランドの雄として君臨してきた経験は、こういう表現力に表れてくるのかと実感した。 文=森口将之 写真=望月浩彦 BMW M135 xドライブ 駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動 全長×全幅×全高 4370×1800×1450mm ホイールベース 2670mm トレッド 前/後 1560/1560mm 車両重量(車検証記載前後軸重) 1570kg(前930/後640kg) エンジン形式 直列4気筒DOHC16Vターボ 総排気量 1998cc ボア×ストローク 82.0×94.6mm 最高出力 エンジン 300ps/5750rpm 最大トルク エンジン 400Nm/2000-4500rpm 変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT サスペンション形式 前/後 マクファーソン・ストラット/マルチリンク ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク タイヤ 前後(取材車) 225/45R18(235/40R19 96Y) 車両価格(税込) 698万円 (ENGINE 2025年2・3月号)
ENGINE編集部