「マツダさんに負けたくない」豊田章男社長が口にしたクルマ愛と危機感
トヨタ自動車とマツダの資本提携が4日、発表されました。提携の具体的な内容は、(1)米国での完成車の生産合弁会社の設立、(2)電気自動車(EV)の共同開発、(3)コネクティッド・先進安全技術を含む次世代の領域での協業など。トヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長がそろって会見に臨み、豊田社長は「未来のクルマを決してコモディティにはしたくない」と提携の意義を語りました。この会見から見えてくるものは何か。モータージャーナリストの池田直渡氏に寄稿してもらいました。
GoogleやAppleなど「新しいプレーヤー」
トヨタとマツダの提携。何の予備知識もなくそう聞いた多くの人は「マツダはトヨタ傘下に下るんだな」と思うらしい。ここ数日そういう理解の仕方の人に何度か会った。 マツダの人が聞いたら青筋を立てて怒るだろうし、トヨタの人も困惑して眉を顰(しか)めるだろう。トヨタ自動車の豊田章男社長は、マツダとの合同記者会見の中でこう述べている。 「かつての自動車メーカーの競争とは『1000万台を誰が最初に達成するか』と言ったことに代表されるように、販売台数をめぐる競争だったのではないかと思います。そして自動車各社の提携もまた、資本の論理で規模を拡大するための提携が中心であったように感じております。みなさまご承知の通り、今私たちの前には、GoogleやApple、Amazonといった新しいプレーヤーが登場しております。全く新しい業態のプレーヤーが、『未来のモビリティ社会を良くしたい』という情熱を持って私たちの目の前に現れているのです。未来は決して私たち自動車会社だけで作れるものではありません。物事を対立軸で捉えるのではなく、新しい仲間を広く求め、競争し、協力し合っていくことが大切になってきていると思います」 ここで言う「未来のモビリティ」というのは、極めて多義的だ。地球温暖化対策のためのCO2削減もあれば、自動運転などの人工知能(AI)化もある。さらには道路を走るクルマ全てを車車間通信ネットワークで接続して、相互に情報を提供し合い、ビッグデータの活用によって道路利用の効率化を目指したり、もっと端的に車両間の通信によって事故を防止するようなことも含まれる。誰がどう考えても、低コストでいままで通りのクルマをつくっていくことだけで自動車メーカーは存続できない。クルマそのものが従来の概念を越えて、自己改革をしていかなくてはならないタイミングが否応なく訪れているのだ。