実質賃金のプラス転換は年末頃(3月賃金統計):物価高の逆風で個人消費は異例の弱さに:円安と日銀追加利上げ
物価高騰の逆風で個人消費は異例の弱さ
実質個人消費は、2023年10-12月期まで3四半期連続で前期比マイナスとなった。5月16日に発表される1-3月期GDP統計でも、実質個人消費は前期比でマイナスが続く見通しだ。予想通りに前期比マイナスとなれば、4四半期連続のマイナスとなる。これは実はかなり異例なことと言える。実質個人消費が4四半期連続となれば、それは2009年1-3月期以来となる。 しかし、この時期は、リーマンショック(グローバル金融危機)という歴史的な経済危機が起こった時だ。今回は、それに匹敵するような経済危機が起きていないにもかかわらず、実質個人消費が4四半期連続となる見込みだ。その理由は、歴史的な物価高騰の影響以外には考えられないだろう。
賃金から物価への転嫁は正常化を遅らせる
日本銀行は、輸入物価上昇を起点とする物価上昇(第1の力)が、賃金に転嫁され、さらにそれがサービスを中心に価格に転嫁されること(第2の力)で、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇が実現することを期待している。また、今夏から秋にかけて、それが確認されることが追加利上げのきっかけになる可能性を示唆している。 しかし、輸入物価の上昇、そして、賃金上昇の一因である労働力不足は、ともに日本経済にとって強い逆風だ。その2つが組み合わされることで、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇が実現し、日本経済の追い風になるという「災い転じて福となる」とのシナリオは都合がよすぎるのではないか。 個人消費への逆風がこの先何年か続くのであれば、それは企業の価格転嫁を制約し、その結果、物価上昇率、賃金上昇率は緩やかに低下していくことが予想される。物価上昇率が2%程度で安定し、2%の物価目標が達成されるという根拠は乏しいと考える。 賃金上昇が価格に本格的に転嫁されれば、それは実質賃金の回復を遅らせ、「輸入インフレ・ショック」からの日本経済の正常化を遅らせてしまうため、決して良いことではない。 個人消費への逆風がこの先何年か続くのであれば、それは企業の価格転嫁を制約し、その結果、物価上昇率、賃金上昇率は緩やかに低下していくことが予想される。物価上昇率が2%程度で安定し、2%の物価目標が達成するという根拠は乏しいと考える。 賃金上昇が価格に本格的に転嫁されれば、それは実質賃金の回復を遅らせ、「輸入インフレ・ショック」からの日本経済の正常化を遅らせてしまうため、決して良いことではない。