「好コンディションの時にマルケスが勝てない理由とは?」【ノブ青木の上毛グランプリ新聞 Vol.18】
マルティンの判断は正しかった
思い起こせば、ホンダRC213Vをマルケスただひとりだけが乗りこなせていたのは、彼の接地感のしきい値が異常に低かったからだ。「フツーの天才」であるMotoGPライダーなら怖くて攻められないぐらい接地感に乏しいマシンに乗って、ひとりでバンバン勝ちまくっていたのだから、やはりフツーではない。 その影響で開発の方向性を完全に見誤ったホンダは、今なお迷路から抜け出せずにいる。多くのライダーの意見を吸い上げながらマシンを造り上げ、「フツーの天才」でもしっかりと接地感を感じ取れるドゥカティ・デスモセディチとは正反対だ。 最後に付け加えておきたいのは、決勝レース途中で雨に見舞われた第13戦サンマリノGPでのマルティンの判断についてだ。トップを走っていた彼はピットインし、レインタイヤを履いたマシンに乗り換えたが、その直後に雨は止んでしまった。ピットインによるタイムロスと、レインタイヤではペースが上げられない状況に、終わってみれば15位と大失敗。マルティン自身も「100%僕のミス」とコメントした。 しかしワタシは、あれがミスだとは1mmも思わない。あの時点で雨が降り続くのか止むのかは、誰にも分からなかった。雨が止んだからマルティンは後退したが、降り続ければ圧勝した……かもしれない。転倒したかもしれない。それはもう、分からないことなのだ。 終わってからの結果についてアレコレ言うのは簡単だ。しかしああいう状況ではすべてが賭けでしかなく、どっちに賭けた者が勝つかは運以外の何物でもない。丁か半か、自分ではどうしようもできないどちらかに賭けて敗れたとしても、それをミスとは呼ばないだろう。 どちらかと言えば、ワタシはマルティンの判断こそ正しかったとさえ思う。バイクは、安全第一。どんなに臆病者と揶揄されようが、無事にレースを終え、無事にレース人生を終えることこそが、最大の勝利だと考えている。 ──マルケスの後ろを走るのはレプソルホンダのジョアン・ミル。 ※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。