コロナで売上げ7割減の大ピンチ、九州のご当地銘菓を作る老舗製菓会社 地方都市で事業を続けていく意味とは
◆承継後、絶縁レベルに悪化した父との関係
----2021年、後藤さんはお父様から5代目を引き継ぎます。承継にまつわる経緯をお聞かせください。 承継自体は、私も父も前向きで、お互いにいつでもいいと思っていました。 コロナの打撃から早期に立て直しを図る必要もあったので、2021年に代表を代わりました。 承継前から意見が衝突することはありましたが、承継後、父と絶縁レベルまでこじれてしまいました。 それまで父が全権を把握し、父がいないと現場は何も動けない状態だったのを、私は権限委譲しながら組織の構造を改革しようとしました。 私としては見守ってほしかったのですが、過程でトラブルが発生したりすると、父がどんどん介入してしまうんです。 思えば、承継について簡単に考えすぎており、まともに向き合って「こうしよう」という話し合いが父との間でできていませんでした。 ----こじれた仲を修復するきかっけは何かあったのでしょうか? 九州経済産業局から、親子での事業承継トークセッションの依頼がありました。 私が単独で参加する予定でしたが、直前になって父も行くことになり…。 道中も無言でしたが、オーディエンスがいる場で互いの思いを話したことで、その後なんとなく空気が緩んだ感じでした。 後藤製菓は、それまで個人事業主だったのですが、この時期に法人化し、私は社長となりました。 現在、父は仕事から完全に手を引いていますが、家族としては普通に接することができるようになりました。
◆「菓子」にとどまらず、有機生姜の新ブランドを
----代表取締役に就任されてから、後藤さんが注力されたことはなんですか? 後藤製菓の存在意義をしっかり自問自答して、ビジョンや事業構造を言語化したことが、大きな成果だと思っています。 承継前にしたSDGs宣言もそこに含まれます。 柔軟な働き方ができる環境づくりなど、労務状況の改善も進めています。 さらに、新規事業へのチャレンジです。 有機生姜を生かした新ブランド「生姜百景」を立ち上げ、ドリンクや調味料などお菓子以外の商品を作るようになりました。 有機生姜は、自社での栽培にも取り組んでいます。 既存の臼杵煎餅自体もリニューアルし、時代に合わせる努力をしています。 本質を大切にしつつ新たなことを取り入れる「不易流行」の経営理念に基づいて、今後もさまざまなことに取り組んでいきたいと思っています。