関東北陸に「春一番」 もともとは防災用語…気象庁は強風被害の注意喚起
気象庁は17日、北陸地方と関東地方で春一番が吹いたと発表しました。春の訪れをイメージしてしまいがちな「春一番」ですが、気象庁天気相談所では「元々は防災用語」として、強風に対する警戒を呼びかけています。
立春から春分の期間に吹く初めての南より強風
春一番とは、立春から春分にかけての時期に吹く、初めての南よりの強風です。日本海側に低気圧、太平洋側に高気圧がある「南高北低」の気圧配置になると、春一番が吹き、気温が大きく上昇しやすくなります。前日の16日には山口県を含む九州北部地方で春一番観測の発表がありました。 それぞれの地方気象台は風速7~8メートル以上を条件としているため、風速が基準に満たなかった場合、南よりの風が吹いても春一番とは呼びません。このため、春一番が発表されない年もあります。また、春一番のあとに強い南風が吹く日があっても、気象庁では「春二番」「春三番」を記録することはありません。
もともとは防災用語 気象庁は「春一番には注意が必要」
気象庁天気相談所によると、春一番という言葉は石川県能登地方や三重県志摩地方以西で昔から使われていたほか、1859(安政6)年の2月13日(旧暦)に、現在の長崎県の五島列島沖で漁師53人が強風によって全員遭難死したという事故をきっかけに、漁師たちが冬から春にかけての強い南風を「春一」あるいは「春一番」と呼ぶようになったという話があるそうです。 気象庁では1962年より、強風への注意を喚起するために春一番という言葉を使用しはじめ、翌1963年から報道機関がこの言葉を取り上げるようになりました。 気象庁天気相談所は、「春一番と聞いて、春の訪れというイメージを持つかもしれませんが、元々は漁業関係者の間で使われていた防災用語。強風波浪注意報または警報と同じです」と、海難事故への警戒はもとより、陸地でも強風によって飛来する物などへの注意が必要と訴えています。 春一番が2日以上続くことはまずなく、春一番のあとは冬型の気圧配置になり、気温が急に下がり「寒の戻り」となることが多いようです。 (取材・文:具志堅浩二)