ソフトバンクが4タテG倒で日本一を果たした3つの理由
日本シリーズの第4戦が23日、東京ドームで行われ、ソフトバンクが4-3で巨人を振り切り、4連勝で3年連続10度目の日本一を手にした。第4戦はソフトバンクのベテラン左腕の和田と、巨人のエース、菅野の投手戦となったが、大会MVPのグラシアルが先制3ラン、さらに巨人の守りのミスにつけこんで追加点をあげた。日本シリーズでの4タテは、2005年のロッテ以来、史上8度目。工藤監督は選手時代を含めると15度目の日本一となった。
第一戦で千賀が与えた残像効果
フィナーレは象徴的だった。 二死一塁で今シリーズヒット1本の坂本を迎え、マウンド上の森は、その初球にインサイドにシュートを投じた。坂本はファウル。第1戦から第4戦まで徹底したインコース攻めである。 坂本は、カウント1-1からど真ん中のカットボールを見逃した。内か外か。インサイドが幻影となり、ソフトバンクバッテリーの配球に揺さぶられボールを絞り切れなかったのだろう。最後は外のカットに腰砕けのスイングが空を切った。 勝利の輪がマウンド付近にできた。工藤監督は、両手を飛行機のように広げ、子供のようにはしゃぎながら、その輪に駆け寄り、おもむろに柳田に飛びついた。そして10度の胴上げ。 「最高の気分です」 指揮官は目を潤ませた。 崖っぷちの巨人は6回に岡本に待望の一発が出た。ノーヒットだった丸が7回に守備に不安のあるデスパイネのドタバタも手伝ってフェンス直撃のタイムリー二塁打を放った。だが、すべてが遅すぎた。しかも、追いつくことはできなかった。坂本、丸の今シリーズの成績は揃って打率.077。完全に封じこまれ、チームは核を失った。 ソフトバンクの野球に詳しい評論家の池田親興氏は、3連覇を果たした理由は3つあるという見解を示す。そのひとつが、バッテリーの巨人打線への徹底研究。初戦で好投した千賀のピッチングにすべての布石があったと見ている。 「チームは巨人打線をよく研究していた。初戦で先発した千賀が坂本、丸、岡本にインコースを徹底的に意識させたことが、ずっと残像となって巨人打線を苦しめた。坂本は、本来インコースが得意だが、そこに150キロ台後半のボールをどんどん投げ込まれると勝手が違う。ボールの質がセ・リーグのピッチャーとまるで違ったのだ。打者にインコースを意識させると、外の変化球が効く。またインコースを意識している岡本には、大きな変化球を徹底して続けたり、ストレートに強い代打の重信には、ストレートをストライクゾーンに投げず変化球攻めを続けるなど配球に意図が見えた。シリーズを通じての配球効果を考えたソフトバンクのバッテリーの勝利だろう」 工藤監督も、優勝会見で日本一のポイントになった試合として第1戦を7回3安打1失点と好投した千賀のピッチングを挙げ「インサイドをしっかりと攻めてくれたことが次へ次へとつながって4連勝につながった」と明らかにしている。