ソフトバンクが4タテG倒で日本一を果たした3つの理由
巨人は、エースの菅野が背水のマウンドで意地を見せたが、グラシアルに先制3ランを浴び、7回には守備に足を引っ張られた。一死から福田の三塁へのゴロに逆シングルでつっこんだ岡本がエラー。一死一、二塁から代打・長谷川を二塁ゴロに打ち取ったが、山本が併殺を焦り二塁への悪送球で追加点が入った。「守備が代わったところに打球が飛ぶ」が野球のセオリーだが、3試合続けて巨人は守乱から自滅した。 池田氏が指摘する2つ目の理由が、今シリーズを通じて如実に現れた両チームの選手層の違いだ。 「巨人は阿部が先発で出ると、代打の一番手が重信、石川だった。一方、ソフトバンクは、長谷川、中村、福田と怖いバッターが3枚あった。機動力もソフトバンクは、周東が足でプレッシャーをかけたが、巨人は、代走の増田が第3戦で走塁ミスをした。DH制のあるパ・リーグとそれがないセ・リーグの差といってしまえばそれまでだが、2枚、3枚ソフトバンクの選手層が上だった。それは中継ぎ陣についても言えた。ソフトバンクの甲斐野、モイネロ、森の鉄壁の3イニングに対し、巨人の中継ぎのマシソン、大竹、桜井、高木といったあたりが踏ん張りきれていなかった。ソフトバンクは結局、武田を温存したままシリーズを終えた。安定感、ブルペンの層も両チームには大差があった」 坂本、丸、岡本の主軸を抑え込まれてしまった後の、巨人の代打陣には、迫力がなかった。外国人枠は投手に割き、打線に外国人助っ人はゲレーロ1枚しかなかった。デスパイネと、今シリーズ3本塁打でMVPに輝いたグラシアルの2枚を打線に揃えたソフトバンクとでは“重量”に違いがあった。 池田氏が3つ目の理由とするのが工藤監督の鬼とも神とも評された采配だ。 「クライマックスシリーズのファーストステージの初戦で楽天に負けたことで、工藤監督の采配がガラっと変わった。工藤監督は、西武、巨人、ダイエーの現役時代の豊富な日本シリーズの経験から短期決戦の流れや勢いというものを知っているのだろう。“調子のいい選手、相性のいい選手を使う”という原則を選手のプライドや実績よりも最優先させた。松田を外し、内川に代打・長谷川を送り、この日も、内川をスタメンから外し交流戦で菅野から本塁打を打っている福田を使った。甲斐野を早く起用せざるをえない展開となったが、その甲斐野、そして“8回の男”モイネロさえも回跨ぎさせた。絶対、今日決めるんだという気迫のこもった勝負采配だった」 ソフトバンクは2000年の長嶋監督vs王監督で球界の話題を集めた日本シリーズ以来となる巨人との宿命対決を制した。19年前は、2連勝の後に4連敗していた。その王会長もグラウンドに降りて選手を祝福。「強かったね。チーム全体が頼もしかった。巨人を倒す念願がかなった。完璧な形。何も言うことはないね」と素直に喜びを表現した。 日本シリーズでソフトバンクが巨人を倒すのは、実は、前身の南海時代の1959年以来、実に60年ぶり2度目となる。このときはエースの杉浦忠氏が野村克也氏とバッテリーを組み、4連投しての4連勝だった。 シリーズ終了後、球団は工藤監督の続投を発表した。契約は2年。来季は就任6年目のシーズンとなる。