なぜ阪神は新型コロナ問題で“失敗”を繰り返したのか?7人感染“クラスター“発生背景に球団管理体質の甘さ
電話取材した他球団の関係者からは「新型コロナに感染したことは誰が悪いと責められることではない。明日、うちのチームから出てもおかしくない。ただ最大限、やることをやっていたかどうかが問題で、最初に球界で感染者を出した阪神さんが、遠征先の外食を条件つきであっても認めていたことが信じられない」という声が出ていた。 今年6月の阪急阪神ホールディングスの株主総会で、こんなシーンがあった。株主から「藤浪君がいちびったことをやってしもた(新型コロナに感染したこと)。役員の皆さん、お客さんや株主がみんな頑張っている中、自制できなかったのかな。でも藤浪君は悪くない。周りがチヤホヤしすぎ」との厳しい意見が飛び、 答弁に立った百北幸司常務取締役は、謝罪した上で こう答えた。 「当時、遠征先、ホームエリアでの外出禁止を定めている球団は(阪神以外にも)ございませんでしたが、プロ野球人、社会人としての自覚を強く促しより厳しく行動措置を講じるべきではなかったのかなと思います」 筆者は、そこに「他球団もやっていないのだから」の組織としての言い訳が含まれていたことに違和感を持った。阪神という組織は、いったいどこを向いて、リスクを管理、遂行しているのだろう。球団体質を示す答弁に聞こえた。 また、この日、今回の問題についての球団からの謝罪、説明は、谷本修球団副社長兼本部長が行った。実務を取り仕切っている責任者ではあるが、フロントのトップである揚塩健治球団社長が出てきて対応すべき案件だっただろう。オンライン会見なのだからどこにいても対応は可能だったはずだ。
そしてもうひとつの”間違い”が選手のモラルの徹底が不十分だった問題だ。チームは会食に4人以内、同一ポジションを避けるという内規を定めていたが、糸原、陽川、岩貞が感染したと考えられる会食には8人が参加していた。店を貸し切っており、不特定多数の人間との接触がないという安心感が、”禁”を破らせたのかもしれないが、チーム最年長の福留とキャプテンの糸原が、ルールを守らなかったという点が、阪神のチームモラルの低さを如実に示している。 新型コロナに感染したことは災難としかいいようがなく、なんの罪もない。たとえチームで決めていた4人以内のルールを守っていても感染は起きた。だが、そのルールを破ったことは問題である。 阪神は彼らにペナルティを科したかどうかを明らかにしていないが、それ相応の処分を下すべきだろう。そして同時になぜモラル、規律がチーム内で徹底されていなかったかを検証すべきだ。 チームモラルの徹底の不備には、監督、コーチらの統率力の欠如もある。もし故・星野仙一氏が、監督であれば、福留や糸原らのチームリーダーが“禁“を破って会食を行うことはまずあり得なかっただろう。フロントの管理不足を糾弾されても仕方がないが、チームモラルに関してはフロントだけでなく選手と近い距離にある監督、コーチの影響力が大きい。グラウンド外の行動も含めてチームの風土を作るのは、監督、コーチなのだ。 中日監督時代の故・星野氏は、現場が逆にフロントのケツを叩いて選手の管理を強化させていた。やりすぎの批判もあったが、遠征先ではチームスタッフがホテルの玄関口で一晩中“番”をして行動をチェックしていた。たとえ、どこにいても“星野の目“があるため選手はグラウンド外でも羽目を外すことはできなかった。「性悪説」に立って選手を大人扱いしない管理方法は、個人のプライバシーが尊重される今の時代にふさわしくない手法ではある。 星野流は、極端なマネジメント手法ではあったが、監督、コーチの統率力は、それだけ選手のモラルに影響を与えるのである。もう選手の自主性に任せることに限界があるのならば、チーム内ルールの違反に対しては、より厳しいペナルティを設け、それを”抑止力”に管理するしか方法はないのかもしれない。いずれにしろ阪神は、選手の管理についての施策を見直す必要があるだろう。 最後に。 本稿のテーマとは少しずれるが、この日のヤクルトー阪神戦(神宮)の決行に問題はなかったのだろうか。