横浜DeNA大和サヨナラ打の裏に隠れたドラマ…「2番起用」ラミレス監督”ぶれない采配”と百戦錬磨ベテランの覚悟
だが、2番の大和にバントやバスター、エンドランなどを使って、ゲームを動かしたのか、といえば、そうではなかった。 初回、3回と2度、梶谷がノーアウトからヒットで出て大和に打順が回っていたが、堅実にバントで送らせるのでもなく、初球からノーサインで打たせ、いずれも2球目を強打してゲッツーに終わりチャンスを潰していた。何かを仕掛けるようなカウントにならなかったこともあるが、ベンチのあまりの無策に「大和2番」の起用に疑問符がついていた。結果的に、サヨナラの場面で対峙したのは右投手ではなく、左腕の塹江だったが、ラミレス監督は、こういう巡り合わせに「大和2番」の狙いを持っていたのである。ラミレス監督の采配は、悪く言えば頑固、よく言えば、我慢がある。信念にもとづき、ぶれないのだ。 大和も百戦錬磨である。目の前で、梶谷が申告敬遠されたところで「歩かされるだろうな、と準備していた」という。 「今日に限っては、まったく結果が出ていなかった。最後の打席。腹をくくって初球から行ってやろうと。割り切って打席に入った。あまり(何を狙うかの)球種とかを考えず、とにかくファーストストライクを打てればいいなと」 実は、5回、7回と二度も得点圏にランナーを置いた場面で連続三振に終わっていたが、いずれも初球から振りにいっている。 「悪い時は消極的になってバットを振りたくない。でも初球からどんどん振って後悔しないようにと思った」 阪神、横浜DeNAの2球団で重ねたプロ15年目の長いキャリアから、悪いときこそ積極性を失ってはならないことを知っていたのだ。 「その前の打席で、三振したときも取り返すチャンスだと思っていた。それでも打てなかった。気持ちを切り替えながら最後の打席でなんとかしようと」 こういうメンタルの強さが大和がプロで生き抜いている理由でもある。 広島の塹江ー板倉のバッテリーも若かった。ブルペンに不安のある広島はクローザーのフランスアを延長10回に温存して、8回から登板させた塹江を2イニング目のマウンドに立たせていた。塹江は、打ち気満々の大和の裏をかくことができず、初球からストレートをストライクゾーンに投じた。 大和が打席に入る際には、「代打を送れ」などの罵声はなく「大丈夫だ」「頑張れ」という温かい声援が聞こえたという。 「力になりました」 148キロのやや外角に浮いたボールを名誉挽回をかけた大和は見逃さなかった。