中国の根強い「反日感情」裏にある“国民のリアル”。現地の学校教育に触れて感じた様々なこと
■尖閣問題のさなかに日本語の授業 2012年には尖閣諸島の領有権を巡って日中関係が悪化し、成都で大規模な反日デモが発生した。 その頃筆者は、息子が通っていた現地小学校の校長から、総合学習の時間に日本語クラスを開いてほしいと依頼された。 日中関係が緊張し、「日本人と分かったらタクシーで乗車拒否される」という噂も流れていた時期なので、日本語なんか教えたら保護者から苦情が来るのではと心配したが杞憂だった。息子の担任教師には、「あなたが授業を代わってくれるから、その時間に自分のやりたいことができる」と感謝された。
同じころ、警察に引っ越しの届け出に行くと、女性警察官に「尖閣問題をどう考えているか」と聞かれた。「国と国はいろいろ問題があるけど、私は中国人の友人とうまくやっているし、政治のことは気にせずやるべきことをやるしかない」と答えたら、警察官は頷きながらパスポートを返してくれた。 国同士の関係がどうであっても、生活に特段の変化はなかった(尖閣諸島のごたごたのときは、日本語を大声で話さないように多少は構えたものの)。
そんな話を中国で暮らした経験がある人にすると、「大連は特殊だからね」と返ってくることがある。 筆者が生活していた大連は日本企業が集積し、非常に親日的な都市として知られる。外にいるときに急に雨が降ってきて息子と2人で雨宿りをしていると、隣に立っていた知らない女性がタクシーを止めて「方向が一緒なら乗ってください」と同乗させてくれたこともあった。 その女性は運転手に「この人日本人だから、タクシーを自分で捕まえられないと思って、見るに見かねて声を掛けたのよ。子ども連れだしね」と話していた。
■反日感情は個人による たしかに大連は特殊かもしれないが、結局は反日感情は個人によるとしか言いようがない。 親日都市の大連にだって「日本人お断り」と垂れ幕を掲げたレストランがあったし、「犬と日本人は近づくな」というサインをつけたバイクに遭遇したこともある。 東日本大震災が起きたときは、息子の学校の保護者が参加するグループチャットに不謹慎な書き込みをする人もいた。 東京電力が昨年8月に福島第1原発の処理水放出に踏み切ったとき、どこで会ったかも覚えていない中国人から「お前は汚染水放出について何も思わないのか」とメッセージが来た。