山口乃々華の夢中「あなたの瞳に映れたものたちが羨ましい」
伝えたい想いがあるとき、人は手紙を書きたくなる。女優の山口乃々華さんが、“あのひと”に向けて今の気持ちをしたためる連載。今回は、伝説の女優マリリン・モンローに宛てた手紙。【連載「〒ののポスト」】
マリリン・モンロー様へ
世界中で有名なマリリン・モンロー様。 生まれたての赤ちゃんだって、また空に戻るまでにあなたの名前をかならず一度は口にするのでしょう。 あなたの生きた記録はさまざまな作品に残っています。 今もなお私たちに圧倒的存在であったことを感じさせ、新鮮な衝撃を与え続け、その甘い魅力は褪せることなく、どんな人の心も虜にしてしまうのです。 私はあなたがどんなふうに生きたのかをよく知らずに、"ものすごく綺麗な方"という認識だけでずっと過ごしていました。 ある日、流し見していたYouTubeにて「マリリンモンローとは」というような動画を見つけ、興味本位で観てみたら、夢中になってしまったのです。 それから、あなたを題材に制作された映画やドキュメンタリーを観ました。残された写真、音楽にも触れました。 私は、マリリン様のことを人よりも深く知れた気分になり、家族や友人や知人にまでも、あれこれとあなたのことを話したりしたのです。 あのモンローウォークは、撮影までにたくさん研究したのちにやっと見つけたものだって知ってた? ヒールの片方をわざと折って不安定な状態を作り出し、あえて歩きにくくすることで独特で妖艶な歩き方を習得し、撮影に臨んだみたい。で、それによってマリリンの出演シーンは増えていき、その後の仕事にも繋がっていたんだって…とか。それから、彼女は簡単にハリウッドスターになれたわけではなくて、“お芝居を上手くするのはなによりも難しい”と思っていたそうで、熱心に熱心にお芝居の勉強をしていたらしいよ。なんて。 情熱的で、真面目。思い描いた理想や夢を叶える力が強かったマリリン様。しかしながら儚く、脆い心の持ち主でもあったとのこと。あなたの視線のゆくえは、明るいものだらけではなかったこと。 実際に知り合ったわけでもないのに、間違っているかもしれないのに、それでもあなたは私が勝手にイメージしていた姿よりも、知れば知るほど人間らしく、魅力的で、人に話さずにはいられなかったのです。 あなたの世界観が好きです。 ロマンチックでゴージャスでお茶目で。 笑顔を近くで見ることができた人が羨ましい。 あなたの瞳に映れたものたちが羨ましい。 短い時間で閉じてしまったあなたの人生。もしも、悔いが残っているとしたら、どんなことなのでしょう。私にはわからないけれど、今もなお、私たちの想像のなかで生き続けるマリリン・モンロー様。 違う時代の違う国に住んでいた、手の届くはずがない存在のスターとしてだけではなく、私たちと同じように部屋の隅で膝を抱えながら悩んだり、悔し涙を流していた、そんな人だったことを少しでもわかっていたいと思うのです。 お空でのびのびと、しあわせないい香りに包まれて過ごしていることを願います。 山口乃々華より 山口乃々華(やまぐちののか) 3月8日生まれ、埼玉県出身。2020年末まで E-girlsとしての活動を経て、2021年から女優として本格的に活動を開始。 映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画「HiGH & LOW」シリーズやHulu版「崖っぷちホテル!」などに出演、『私がモテてどうすんだ』ではヒロイン役を務めた。近年ではミュージカルにも活動の幅を広げ、2022年には「SERI~ひとつのいのち」でミュージカル初主演を務め、2023年は「SPY×FAMILY」ではフィオナ・フロスト役、a new musical「ヴァグラント」ではヒロイン(W)役を好演。2023年末から2024年1月の舞台「呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-では、釘崎野薔薇役を務めた。7月はミュージカル「ラフヘスト~残されたもの」への出演を果たし、9月には博品館劇場での音楽朗読劇「手紙」の出演が控えている。 TEXT=山口乃々華 ILLUSTRATION=pinoco
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